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【感想・あらすじ・レビュー】ともぐい:河﨑秋子

 

 

ともぐい:河﨑秋子著ののレビューです。

☞読書ポイント 

熊との死闘シーンはもちろん、その他のシーンも壮絶。前半と後半とで雰囲気がガラッと変わる。そして結末の意外性に思わず唸る。いろいろな意味で想像を超えて来る圧巻の作品。新たな熊文学、間違いない。

 

直木賞受賞作

ともぐい

ともぐい

 

感想・あらすじ (ネタバレなし)

 

いやいやいや~~~ものすごいものを見てしまった―――そんな一言が読み終わった時の感想です。読んだのだけど「見た」という感覚。すごかったです。

 

もともと「熊文学」が好きなわたし。吉村昭さんの「羆嵐 」を読んだ時の衝撃は今でも思い出すと身震いするし、「デンデラ」で見た熊と老婆たちの迫力ある戦いも鮮明に覚えている。今回、新潮社の中瀬さんが「新たな熊文学」「令和の熊文学の代表作」とおっしゃっていたけど、まさかここまでだとは思っていなかった。そうこうしているうちに、本作は直木賞を受賞!!期待をさらに高めての読書です。

 

良い意味で予想をはるかに超えた作品。私はてっきり、次々と熊が登場し、死闘を重ねる内容とばかり思っていた。もちろん、あります。ものすごい死闘シーンも。けれども、本作はそれ以外の場面も読ませる。

 

 

 

 

主人公の熊爪という男の得体の知れない感じがずっと続く。普通の人間とは感覚的に違う部分が多い野性的な熊爪。読んでいくうちに熊と熊爪が同類のように思えて来る。

 

舞台は北海道、時代は日露戦争前。熊爪は相棒である犬一匹と山に住み、狩猟をし、獲物を射止めたら山を降り、換金して必要なものを買ってまた山に戻る。そんな生活をしている。読み始めから広がる鹿の狩猟シーン。ものすごい迫力・生々しさに、一気にこの世界に飲み込まれる。

 

深爪はたった一人で生きているわけだが、幼いころ養父に自然の中で生きる術を教えられ育った。作中、熊にやられ大怪我を負った男が出てくのですが、熊爪の手当ては手荒なやり方で、びっくりするような治療を施したりする。

 

熊とのシーンも強烈だが、緊急時に見せる熊爪の行動や、獲物の解体など、終始、手に汗握る場面が続く。

 

本筋は熊との対峙になるわけだが、これはもう孤高の猟師・熊爪の意地とプライドをかけた壮絶な戦いになる。熊も人間も生きるのに必死、負けられない戦いとはまさにこのこと。

 

後半はガラッと風景が変わるような展開へ。盲目の少女・陽子との新生活。熊爪の今後の生き方の変化が見られる。それ自体も意外な展開なのだけど、この小説の凄さは、最後に来てまたまたビックリするような結末が待っている。ええーーーってなりますよ。

 

 

 

 

いろいろ盛りだくさんなのですが、詳細は書かないようにしました。これはやはり読んでこの世界を存分に味わってほしいと思うのです。生への執着もあれば、死は来るものではなく掴みに行くという行動。動物と人間は対等であるということ。産むこと、育てること。本能のまま生きるとは?本当に自分にとって幸せな状態とは?そしてタイトルの「ともぐい」の意味は? 矢のように次々と飛んでくる疑問が、頭の中に刺さる。私達とあまりに違う環境で育った熊爪の生き方。次々と彼の生きざまを目の当たりにして放心してしまう。

 

そんな中、唯一心を和ませてくれる存在であった熊爪の相棒の犬。彼の健気な様子に毎度胸がキュンキュンした。健気すぎて泣けてくる。頑張ってたよなぁ。

 

文句なしの直木賞受賞作です。「令和の熊文学の代表作」と言っても良いのではないでしょうか。これをきっかけに、河﨑さんの他作品も読んでみようと思います。

 

河﨑秋子プロフィール

1979年北海道別海町生まれ。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。2014年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、同作で2015年度JRA賞馬事文化賞、2019年『肉弾』で第21回大藪春彦賞、2020年『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞を受賞。他書に『鳩護』『絞め殺しの樹』(直木賞候補作)『鯨の岬』『清浄島』などがある。(新潮社・著者プロフィールより)

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