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【レビュー・あらすじ・感想】デンデラ :佐藤友哉

 

 

デンデラ :佐藤友哉著のレビューです。

デンデラ

デンデラ

 

 

感想 老婆たちの勢いに巻き込まれ魅了され......

 

濃い、濃いよ!

その濃さは本を開いたところからさっそく始まる。
「出席簿?」のような老婆たちの名前と年齢がずら~りと並んでいてその人数の多さに尻込む。こんなに人数どうやって覚えりゃいいのか?という不安もあったが、もう行くしかない!(この心配は読み始めると何人出てきてもどうでもよくなります)

 

「楢山節考」を初めて読んだ時もそうだけど、山に捨てられるというより、時期が来れば山へ行くものだということを老婆がしっかり受け入れているということに驚く。

 

本書の老婆たちも、村の掟により70歳を過ぎると口減らしのため雪山に捨てられる。いくら「極楽浄土へ行ける」と言われているとしても、極寒の山中に置き去りにされるなんて!こんなに切なく恐ろしいことはない。

 

主人公・斉藤カユも例外なく山に捨てられるのだが・・・。この話は捨てられたところからが本番なのです。そう、捨てられ、生き残った老婆たちが集まって作った村、それが「デンデラ」なのだ。

 

 

 

 

飢え、寒さ、疫病、派閥、個々の思惑、そして、羆!
これらの問題に立ち向かう老婆たち。

 

平均年齢80歳にもかかわらず、とにかくこの老婆たち、かなり元気でアクティブなのだ。下手したら私なんかより全然元気だ。

 

山登りレース、寒さ、空腹我慢大会など仮にあったとしたら、恐らく勝者は老婆たち。軟弱な我々を横目にがっつり賞金を手にする老婆たちの高笑いが聞こえてきそうなくらいガッツがある。

 

何もない村を一から作って来たわけで、家だって建て、食物だって自分で見つけてくるタフさ、羆だって手作りの槍一本で立ち向かうというワイルドさがあるのです。

 

こんなに気力も体力もある人々をなにも姥捨てしなくたっていいのに・・・って何度も思ってしまう。再チャレンジの機会を与えてあげてよぉ。

 

と、ツラツラ書くとキリガないほど突っ込みどころ満載なんだけど、ホラーよりずっと怖かったのがやはり羆戦だ。

 

老婆も羆も生きるためにどちらも必死なのだ。これら戦いのシーンは、かなりグロテスク。わりと心臓が強い私でも息切れして本を一旦閉じたくらいだから、駄目な方には厳しい場面になりそうです。

 

 

 

 

時代も場所も分からないけど、実際あった話と言われれば信じてしまいそうな妙なリアリティがあったり、老婆たちの名前は、まとわりついてくるような独特な世界観を作り出している。

 

しかも、なぜにフルネームで呼び合うのか。老婆たちのその特徴ある言葉づかいは性別さえも超え、結構癖になるものがあり、思わす自分も真似したくなるという・・・(笑)

 

ひとつひとつ拾い上げると謎だらけなんだけど、最終的には老婆たちの勢いに巻き込まれ魅了されている自分がいた。老婆たちに生命力にただただ、おののくばかりだった。

 

「ちょい読んでみるか」と軽いノリで読んだら、老婆たちの勢いにすっかり魂までも吸い取られ、ぐったりしちゃいました。

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