BAD KIDS:村山由佳著のレビューです。
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感想:
「おいコー」が終了したので、あらたな青春小説が開始されたのかな?って思ったわけだけど、読み始めてみると「いや、これは現在の村山さんの作品じゃないな?」って、うっすら感じました。まぁそれはそれで私にとって初読みには変わりないので、とりあえず最後まで!
それにしても、なんかこう懐かしい感じの村山作品。青春、恋愛、苦悩。恋をするって、苦しさと喜びの間で常に揺れ動くものだということがひしひしと伝わって来る。今回は、女子高生である写真部の部長・都と、ラグビー部の同級生・隆之の恋と友情の話。でもこれもちょっと一波乱あるな....と予想される恋愛を彼らはしている。
都は20歳も年上の男性に身も心も振り回されるという恋愛真っただ中。別れを決心するも、なかなか切れずにいる。そうこうしていうるうちに都に新しい生命が宿る。一方、隆之はラグビー部の同性のチームメイトを好きになり、自分自身の感情に戸惑い苦悩する。しかも、好きになったそのチームメイトが付き合っている女性は、兄の元恋人。さらに話は複雑化。
....という、高校生でありながら、すでにかなりドロッとした恋愛を繰り広げている。都と隆之は互いの傷ついた気持ちに寄り添い合う。友情を超えた二人の関係は注目です。
若さゆえの葛藤や不安はさておき、隆之の好きな相手であるチームメイト。その彼が付き合っている年上女性の気持ちに「そうなんだよ」と共感。「初めての恋」に舞い上がる相手に対しとても冷静。恋をすることがどんなことか、どんな風に落ち着いていくか、その道のりを彼女は知っている。「それが年を取ること」と、彼女は言っている。
でもそんなことはもちろん高校生の彼らに解るわけがない。好きは好き、真っすぐひたむきに気持ちをぶつけて来る。はぁ....熱い。このあたりのやり取りを見ていると、「自分は随分遠くに来たものだ」と、感じさせられちょっと寂しかったりもする。青春小説にリアルタイムで乗っかって、思い切り感情移入したいものだのぉ。
それはさておき、彼らの青春の行方はいかに...。
さて、読了後、巻末を見てみた。本書の初出は1994年「小説すばる」でした。同年に単行本が出て、97年に文庫化。それを再編集したのがこの本ということです。現在「多様性」や「LGBT」が当時より盛んに叫ばれているので、再度ピックアップされたのかなぁ。
とにもかくにも、ラストは....これからどうなの?って、続きが期待できる余韻を残して終了している。もしかしたら続きがはじまるから再編集されたのかなとか、ちょっと悶々とします。
さらに調べたら、これ「BAD KIDS」っていうシリーズなのかな。登場人物は違うみたいね。
りすさんからのnext本
村山由佳さんの初期の作品と言えば「おいしいコーヒーのいれ方」だよね。長い時間をかけてようやく一応の完結。もう読んだかな?最終話が出たこと自体、知らな人も多そうね。読み逃さないように!