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【レビュー】ぷえるとりこ日記:有吉佐和子

 

ぷえるとりこ日記:有吉佐和子著のレビューです。

ぷえるとりこ日記 (岩波文庫)

ぷえるとりこ日記 (岩波文庫)

 

 同じ景色を見ても、感じることは育ってきた環境によって随分と違う。各国の学生の視点から見えて来たものは・・・。

 

 

有吉さんの作品のなかでも、これは新しい試みだったのであろう。
なかなか新鮮な形での読み物です。

 

凡人な私は単なる旅行日記だと思っていたのですが、日記は日記でも日本人の留学生・崎子と、アメリカ人学生・ジュリアの日記が交互に綴られている。二人のものごとの捉え方の違いが面白い。特にジュリアの毒舌っぷりに注目。

 

彼女らはニューヨークのミルブリッジ大学の学生で、大学の社会科学旅行で、プエルトリコの旅へ出る。参加者は39名。語学力も考え方もまちまちな学生たち。黒人、ドイツ人、メキシコ人、ユダヤ人、そして黄色人種の日本人など国際色豊かなメンバーがプエルトリコに向かう。

 

まず彼女たちは現地の生活を体験するためにいくつかのグループに分けられ、貧しい村の民家にホームスティをするのだが・・・・。

 

 

 

崎子とジュリアが書く日記の対比がこのあたりからとても興味深いものに。
ジュリアは貧困生活の人々を上から目線で終始馬鹿にし、崎子はそうは言ってもこの貧困の原因はアメリカにあるのではないかと気づき、ジュリアの言動にイライラさせられる。

 

またジュリアはプエルトリコ人だけでなく、日本人の崎子に対してもかなり嫌みたっぷり批判をしている。

 

嫌みったらしい傲慢なジュリアの描き方が有吉さんならではで、憎々しいったらありゃしない!こぶしを思わず握りしめちゃいます。結局、食事がまずいだの、子供が多すぎるなど、居心地が悪い民家からホテルに移動してしまうありさま。

 

さて、村の調査が済むと、首都にあるプエルトリコ大学へ。
やはり若者たちのこと、夜になると調査そっちのけで男性の品定めやデ―トの話に明け暮れる女学生たち。

 

崎子にも例外なく出会いがある。ホセ・アレグリアは未来の大統領候補と噂の青年でみんなの憧れの的。そんな彼に選ばれた崎子は、彼のうちに呼ばれ、プロポーズされるのだが・・・。

 

特にこの調査が何かの役に立つとか、彼女たちの将来を大きく変えるといった話ではない。しかし、自分の足で歩き、見て、聞いて、話して、何かを感じ、何かに気づくという旅でしか得られないものが、この小説のなかにはたくさん詰まっている。

 

また、当時の現地の様子がどんなものであったのか、彼女たちの各々の視点から見えて来たものは意外にも大きく、小説といえどもやはり侮れない。貴重な資料でもあるとも言えます。

 

プエルトリコの歴史背景については解説で詳しく説明されている。プエルトリコのこと知りませんって方は、こちらの解説をざっくり読んでから、本編を読むと、より本作の深い部分まで理解できると思います。(アレグリアの家族の歴史背景なども含め)

 

ん~、しかし、有吉さんの書くものって、どうしてこう色褪せないのでしょうね。どの作品を読んでも、いつもこの部分が揺らがない感想になってしまうのですが・・・。

 

※1959年11月から翌年8月まで、有吉さん29歳。ニューヨークの近くの女子大に留学していた時の体験をもとに生まれた小説。学生たちとプエルトリコの旅も本当に行ったそうです。