Row & Row:村山由佳著のレビューです。
☞読書ポイント
感想・あらすじ
久々に村山作品のド真ん中を読んだ気分になりました。そう、ザワザワした気持ちがずっと続く小説。誰にも感情移入出来ない、どの登場人物も好きになれない...。今までこのパターンを何度も味わって、何度、あーもう嫌だなぁ、どうしてこんな人ばっか出て来るんだろうって思わされたものだ。それでも面白いは面白い。
図書館で手渡された時に「おお!こんな厚いのか!」と後ずさり。数冊まとめて借りているものだから、期限内に読み切れるか?と。500ページ越えの本はやはり構えてしまいます。しかし、読み始めたらスイスイとあっという間に読了。これも村山作品の特長というか、どんなに長くてもあっという間に読ませちゃう力には毎度恐れ入る。
今回も人間模様がドロンドロンしていました。読みながら登場する夫婦関係のことを考えるわけだけど、最初は、「あー、お互い結婚する相手を間違えちゃったパターンだな」って。だってこの旦那、明らかに奥さんといるより、不倫相手の方が合っているじゃないの。妻の方も、なんか旦那に遠慮があったり、しっくり来ていない感じは否めない。むしろ他の人との方が対等な関係で自分らしく居られる感じ。
と、唐突に語ってしまいましたが、妻・涼子は広告代理店に勤める43歳のバリバリのキャリアウーマン。夫・孝之はは3歳年下で美容師。二人は結婚して13年。現在は郊外の一軒家に暮らす。自宅の1階が夫の職場である美容院。妻は日中、仕事で不在。忙しい時は会社の近くに泊まる生活が続いている。セックスレスな夫婦だけど、決して仲が悪いわけではない。しかし、経済的に妻に頼らざるを得ない夫は、どこか遠慮があるのも事実。二人の間に横たわる溝、それを互いに見て見ないふりをしていた感は否めない。
そこに美容院のアシスタントとして雇われた20代の美登利。孝之と彼女は趣味の自転車サークルで出会う。もういろんな意味で条件が揃っちゃうわけなんですけどね。この美登利がなんとも肉食系というか。清純そうな感じで、がっつり孝之を狙って行ったとしか思えないほど、一気に彼の気持ちを絡め取っていく。そんな二人に、妻の涼子は気が付いていくのだけど、取り乱しもせずクールに振る舞う。
なんだかねぇ....。夫は美登利と付き合うことで性に目覚めちゃった感じだし、美登利は「1度だけ」と言いながら、結局は終始孝之から離れない、離さない。涼子は涼子で宙ぶらりん状態で、結果、あっちこっちでふらふら身を委ねてしまうとういう。とにかく3人、そして周りの人々もみんな獲物を狙っている状態に見えて仕方ない。肉食な人々が、隙あらば入ってくるみたいな。
こうなると、あとはどことどこがくっついて、どういうラストになるのか見届けなければとなるわけだが、後半に来て「どひゃーーー」という展開が待ち構えている。孝之から妻への提案がぶっ飛びもの。大ラスは、まぁ、そうなるよねってところに落ち着くが、それにしても孝之の身勝手さには呆れてしまいました。
はぁ....。毎度のことだけど、ザラザラした話だったなぁ。角田光代さんの描く嫌な男性は、じっとりした陰湿な感じであれも苦手だが、村山さんの描くダメンズ具合にも終始イライラさせられます。←もういつもそう(笑)そして、ダメンズ以上に、いや~な気持ちにさせられるのは、美登利のような女性。弱そうに見えて、実は誰よりもあざとい。人のものを奪うのが好きな人ってホントに居るんだよね。
ということで、ところどころに出て来る秀逸な言葉も必見です。官能部分も健在ですが、上手く話に溶け込んでいるので、村山作品を読み慣れている方にとっては通常レベルだと思います。(個人の感想ですw)
妻である涼子が出した結論を知りたい一心でラストスパート!終わってみれば500ページもあっという間に過ぎ去りました。
Row&Row(ロウ・アンド・ロウ)の意味
ROWの意味は「漕ぐ」なんだね。だから、帯に「漕げよ、漕げ」ってあったんだ~。