丸の内魔法少女ミラクリーナ:村田沙耶香著のレビューです。
☞読書ポイント
設定から飛ばしてまくる村田作品
これから片っ端から読んでいこうと思っている村田沙耶香さんの作品。今回は、表紙もキラキラファンシーだし、そんなどぎつい内容ではないでしょう~、なんて手にしてみたが、結局「うへぇー」な展開。落とし穴に落とされ「また騙されてもうた!」と舌打ち。やっぱこの方の作品は闇深い。
なんの疑問もなく生活している中で、ごく一部を変えることによってこんなにも見え方が違ってくるのか....ということが詰まった短編集。
例えば「無性教室」という話。
性別がない学校ってどんなところを想像しますか?友達の性別が判らないことにより、どんなことが起こるのか。多感な時期の少年少女たちは、それでも誰かをを好きになる。
好きという感情にまっすぐに立ち向かっていく少女の気持ち。相手の性別が判らないだけに逆に「好き」の気持ちの本質が見えてくる。というか、好きになる気持ちは、相手が男であろうと女であろうと大差はない。そんなことがよく解る話です。性別を取っ払た先にある、気になるあの人との関係の行方はいかに....。
「変容」という話もすごいです。
「怒る」という感情を持たない人々。性格にも流行りがあって「怒る」という感情を出すこと自体がもう古い...みたいな(笑)主人公の女性はそんな変わりゆく世界に戸惑い、抗うのだが......。「なもむ」など、新たな感情を表す言葉が出てきてたりで、奇想天外な世界に運び込まれる感じがめちゃくちゃ面白かったです。
これらの作品の面白さを語るのは難しいのですけど、この奇妙な村田さんの作品には社会問題が潜んでいる気がします。
変な話~って思いながらも、ジェンダーのことを意識させられたり、世代間のギャップなんかを考えさせられたり、そういった社会にいくらでもある問題を、かなり遠くから私たちに投げかけてきているような気配を感じます。難しいことを語らずして、社会問題の粉を頭上から降りかけて来る。そんな村田さんの企みが作品の中にある気がしてなりません。
だから恐ろしいんですよねぇ。でも凄い!って、読むごとにその気持ちが固まっていく感じがします。次は何を読もうか。わたしのなかで、村田作品はホラー小説を探すのと同じ感覚があるのは気のせいであろうか(笑)
【つなぐ本】本は本をつれて来る
こちらは中学生の男子が、様々な角度から社会問題を投げかける。