コンビニ人間:村田紗耶香著のレビューです。
☞読書ポイント
読みながら、あの個性的な作者の村田さんの気配が忍び寄る。
ようやく読むことができた「コンビニ人間」。待ち時間が長かった分、各方面から面白かったという感想が聞こえてきていたので、早く読みたいという気持ちがが高まり続けていた感があります。
その間に読んでいた(【レビュー】ご本、出しときますね?:若林正恭 - うずまきぐ~るぐる)では、村田さんのちょっと変わった体験談から感じ取れた不思議ちゃん的な人物像にびっくりさせられたりしていた。ということで、「消滅都市」ですでに村田作品に触れてはいたものの、芥川賞を受賞したこちらの作品に大変期待をしてました。
なにせ、村田さん、コンビニの店員さんもしていると言うじゃないですか。そのあたりの旨味を活かしているのだろうなぁと。
とても読み易かったので、スラスラとページが進んでしまうのですが、内容は色々考えさせられる現代社会に潜むシリアスなことが含まれている。
主人・公倉恵子は三十半ばの独身女性。大学時代からはじめたコンビニのアルバイト。卒業しても他に就職せずコンビニの店員として働き続けている。
恵子はちいさいころからちょっと変わっていた。小鳥が死んで皆が泣いているのに、持ち帰って食べようと言ったりして周りを困惑させるような子供だった。何故、みんなが困惑しているのか分からない。周りを困らせぬよう、いつしか恵子は自分の行動等を抑えて生きるようになった。
コンビニでのバイトはマニュアル通りに動けばよい。周りの話し方や服装を真似してみることによって、ある程度の人間関係も良好に保たれる処世術も習得した。仕事も順調だし、このままでも十分といった毎日ではあったのだが、以前、問題を起こして解雇された元アルバイト店員と恵子は再会し、あれよあれよと同棲することになる。この男が曲者で、嫌な予感しかしないわけで・・・。
コンビニで働く女性を描いた日常に過ぎないこの小説。でも、なんだかとてもしんどいのです。個人的には正社員であろうが、バイトであろうが、恵子のように18年間もひとところで仕事を続けているということは、立派なキャリアじゃないかと感じます。
しかし、36歳で正社員にもならず、結婚もせず、バイトでいることに対して、自信が持てない恵子。この状況は世間の「普通」ではないと。自己肯定感が持てないという社会。本当に生きにくいと思うのです。
この年齢だからこうであるはずだ。この学歴だからこうでなきゃ、等々、人はどうもある一定の決められた型にあてはめようとしたがる。多様性、多様性と言われているけれども、まだまだ、それを認め、受け入れる寛容さはないと感じます。コンビニという職場から見える社会のあれこれは、今を生きる私たちの環境そのものを映し出しています。
どこをどう面白かったのかと言われるとはっきり言えないのだけれども、ライトなタッチの小説なのに、現代社会の息苦しさをチクリチクリと描いている作品だと思います。
【つなぐ本】本は本をつれて来る