ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー:ブレイディ みかこ著のレビューです。
難しいテーマの宿題をやり続けているような日々で見つけ出す答え
どんなに幼くても、環境によってシリアスな問題に挑まなければならない場所がある。━そんなことを終始感じたのが本書。
貧富の差、家庭環境、国籍、肌の色、性別等々、学校に行くだけでこれだけの現実を目の当たりにし、その都度、自分なりの答えを見つけ出そうと日々過ごす中学生。
彼はイギリスで暮らす日本人のブレイディみかこさんと、アイルランド人のパートナーとの間に生まれた息子で、名門カトリックの小学校から、「元・底辺中学」に進学。この学校は、様々な環境で育つ子供たちが集まって来ている。
ここでのエピソードは日本の学校とは別の複雑さが数多く存在する。中学生である彼が日々感じること、考えることは山のようにやってくるのだ。その悩みを母親のみかこさんと共に考え、その都度息子なりの答えが出てくるのだけれども、その考えを見るにつけ、彼の感受性や観察眼にハッとさせられるものが多い。
中学生にしてすでに友人の気持ちをしっかり汲み、そして配慮する。大人だってなかなか出来ないことを、彼は自然に振舞っている。その人に合った距離の取り方が身についている。これらはきっと様々な立場の人々が集まる場所に身を置いているからこそなのだろう。
親であるみかこさんも学校のボランティア活動で、親たちとの付き合いの難しさに遭遇している。どんなに注意深く接していても、思わぬ一言を言ったばかりに一気に関係性を崩してしまう。これはどこの国でも一緒だろうが、相手の出身国までに関しても知識は要するし、細心の注意を払わなければ、時として相手を怒らせてしまうこともある。
ジェンダーやアイデンティティなど小難しい話よりもこれなのだ。
とにかく生活の些細なことでの躓きを自分で体験して、その時の痛みや苦悩や、時に無知であった自分への反省をなどを繰り返すことによって、自分なりの考えを持っていく。これこそがこれらの問題に深く向き合えたことなのだと。
特に興味深かったのは制服のリサイクルの話と、親子が日本に帰省したときの出来事。息子さんにとって日本はより強く自分のアイデンティを考える場所になった。
最後にタイトル、秀逸ですね。息子さんの全てが詰まっています。
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