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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】ミシンと金魚:永井みみ

 

 

ミシンと金魚:永井みみ著のレビューです。

 

 

☞読書ポイント 

認知症になっても、いろんな過去の断片が頭の中で手をつないでいる。主人公のカケイさんの壮絶な過去のはなしから、「老いる」ことをひたすら考える。

 

カケイさんの頭の中の世界は装丁画が再現しているかのよう

 

ふわっふわとした読み心地だったなぁ。つかみどころがないというか。というのも、本書の主人公は認知症のおばあさんなのだ。彼女が日々どんなことを考え、周りの人々と話したり、心の中で感じたりしているのか。まるで自分が彼女になったかのような、そんな視点で読み進めていく感じでありました。

 

認知症ではない者が、その症状を持った人々の心の裡を書くということはどういうことだろう?想像の範囲を抜けられないのではないかな?なんてことも考えながら読んでいた。作者の永井みみさんはきっと老人の気持ちが解る年代、つまりご高齢の方なのか?と想像したりもした。

 

とにかくとてもリアルな感じがするんです。認知症の人を描いた小説は今まで何冊も読んだけど、「ミシンと金魚」は、主人公のカケイさんのちょっと混沌とした頭の中が「ああ、こういう感じなのかもなぁ」とぼんやり感じることが出来るのです。

 

また、自分を世話してくれる介護士をみんな「みっちゃん」と言う名前にしてしまうあたり妙にリアルです。これにはカケイさんにとって深い意味があったわけですが....。

 

 

 

本書はそんなカケイさんの壮絶な人生を振り返りながら、日々の暮らしを綴っている。少し前のことは忘れてしまうのに、遠い昔のことははっきり思い出せる。年を取るとこの傾向が強く出ると聞いたことがあるが、人間の記憶の範囲って一体どうなっているのだろう?自分が年を取ったら、どの時代の自分を鮮明に思い出すのだろう?....なんてことを、つらつらと考えてしまった。

 

カケイさんの独特な口調と、話のテンポに慣れるまでちょっと大変だったけれども、気づかぬうちに一気に物語に引き込まれていった感が強い。

 

ちなみに著者の永井さんのことを読後に調べてみたところ、やはりケアマネージャーの仕事をされているときに本作を書かれたとのこと。リアルな会話はご自身の経験があったからこそなのでしょうねぇ。

 

ドーンと大きな文学賞を取られたので、次作を作るのに一段ハードルが上がったのではないでしょうか。でも作家になる夢がようやく叶ったのですものね。今後もあらゆるジャンルの小説にチャレンジしていただきたいと感じました。

 

以下、Amazonからですが、永井さんの強い気持ち、すごいです!コロナでご自身も死と向き合ったからこそって部分も大きそうですね。なにはともあれ、夢が叶うって素晴らしいこと。おめでとうございます。

 

 

【つなぐ本】本は本をつれて来る

*家族が認知症にったら....

こちらも認知症のお話。認知症を発症した父親と家族の在り方を描いたもので、いろいろ感慨深い内容になっている。介護には何が一番必要なのか....考えさせられます。

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