老婦人マリアンヌ鈴木の部屋:荻野アンナ著のレビューです。
☞読書ポイント
女性が集まるところには、目まぐるしく話もやってくる!
よく女性たちのおしゃべりは同時に話して人の話を聴いていないとか、あっちこっちに話が飛ぶとか言われるけど、実際それでも会話が成り立っている。男性たちの会話ではこの傾向はあまりないみたいですけどね。....と、本の感想と一見関係なさそうな話ですが、本書全体的な雰囲気は、この女性たちの同時会話に似たものを感じます。
どの人もがなんだか忙しく、ありとあらゆる話が飛び交っていて休まる暇がない(笑)とにかく不思議な読み心地。現実味があるようでないし、介護の話がメインなのかと思いきや、怪しいビジネス話が出てきたりと、まったくもってどこにどう焦点を合わせればよいのか戸惑うばかり。加えて、日本人だけじゃなく、外国人も続々と登場するのでどんどんと混沌とした人間関係が露出する。
表題の老婦人マリアンヌは横浜の山手の洋館に住む90歳。青い部屋のベッドに横たわるマリアンヌは要介護。彼女の介護には50代の介護士・モエをはじめ、介護事業を営むやり手経営者のトチ中野などがマリアンヌのお世話をしている。マリアンヌには娘のエリがいるのだが、彼女には仕事があり、母親の介護を人頼みにしているといううしろめたさがある。
介護の話がメインだと思っていたが、マリアンヌに関わっている人々の私的な生活も描かれる。例えば、宝石にはまりまくる者がいて、それ関係の話が大量に投入されている章があったり、買い物依存症や老後の婚活、はたまた舞台が海外へ飛んだりと、目まぐるしく変わるそのバリエーションの広さに驚かされる。
ヒューマンドラマと言うより、チャッチャと場面が変わる劇を観ているような気分です。なので、介護関係の重苦しい雰囲気はまるでない。でもでも、ちょっと変だけど、こういう介護チームはなんだかんだ案外理想かもしれぬ。
ということで、ガチャガチャ、ゴチャゴチャ、我々女性たちは本当に人生いろいろだなぁと感じさせられました。50代も、60代も、いや、90代も。いろいろ経験してきた女性たちは、さらにパワーをアップして去っていた....そんな読後感が残る。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
こちはイランの9人の女性のたちが「茶飲み話」をはじめますよ!本音トークから下ネタまで、お喋りは続くよ、どこまでも。