DRY:原田ひ香著のレビューです。
高齢化、介護、年金、生活保護、不正受給、貧困問題は繋がっている
うむ・・・・なんて殺伐とした話なんでしょう。
最初は家族のゴタゴタを描いた作品なのかと思っていた。が、いきなり、母親が祖母を刺すというスゴイ話からはじまる。でもそんなことは序の口。それを上回る物凄いことが日常で行われる怖さたるや、読みはじめは想像だにしなかった展開となった。
やっていることが本当に酷い。
高齢化に伴い介護する側、される側。そして常に付き纏うのがお金の問題。
本作は、あり得ないぐらい酷いことが目の前で起こるのですが、その発端にあるのは、祖父の介護を一手に引き受けていた孫娘の苦悩と孤独。
親せきから押し付けられ、介護を一生懸命していた女性が、徐々に軌道を逸してあらぬ方向へと進んで行ってしまった話はやるせない一言に尽きる。堕ちるところまでどこまでも堕ちていく。
過ちを次々と重ね、もう引き返すことが出来ないところまで行ってしまう怖さもあったが、この人たちの行く先に出口があるのか?どう話が終わるのか?と、心配とも言えるどんよりした気持ちがずっと付き纏う。
登場人物は、不倫、離婚を経験し、十年ぶりに実家に戻った藍。お金にがめつい母親と祖母。そして、隣の家で孤独な介護生活をしている美代子。藍は母と祖母の事件後から、隣の家の美代子と頻繁に接するようになる。美代子は祖父の介護をしているはずなのだが、なんだか違和感が・・・やがて、藍はある事実を知り、そこから転がるように犯罪に手を染めて行くのだが・・・。
犯罪シーンの残虐さはそれは酷い状況で気分が悪くなるほどのものなのだが、いたってライトに日常に馴染ませているように事件が起こっているところがもう・・・。
でも、ラストに行くほどこの話の根深い社会問題が絡んでいることが分って来て、気持ちがゾワゾワします。
高齢化、介護、年金、生活保護、不正受給、貧困。
どれも繋がっているんですよね。お金が全てとは言いたくはないけれど、お金と助けになる人とのつながりがいかに大事であるか、現実を突きつけられる内容でもありました。果たして彼女たちに逃げ場はあったのだろうか?
それにしてもここまで・・・・っていうのは、やはり小説だからかな。
いや、現実でも起こりそうな話かもしれません。
最終ページの参考資料に「ミイラ」関係の本が並ぶ。うぅぅ・・・。