NHKの「ひるまえほっと」内で、女優・作家である中江有里さんが紹介した本を掲載。
番組内のコメントや私のコメントを添えて掲載しています。
番組コーナー紹介文
月に一度のブックレビューです。案内人は女優で作家の中江有里さん。年間300冊の本を読む中江さんが、幅広いジャンルからご紹介。あなたも夢中になれる1冊に出会えますよ!
今回のテーマは、人間っておもしろい!
おじさんはどう生きるか:松任谷正隆
中江さん:
70歳を迎える松任谷さんのこだわりなどが軽妙に描かれてる。非常に楽しく読み始めたんですけど、年を重ねてもこんなに落ち込んだり嘆いたりするのかとちょっと驚きました。自虐的なんですがオープンな内容に非常に共感もしました。帯には「意地を張らずに生きるヒント」ってあるんですね。秀逸だなって思いました。ラストの方には私と同世代のジェーン・スーさんとの対談が収録されている。おじさんはどうしてズレるんだろうか?と悩んでいる松任谷さんに対して、スーさんは男女の見えてる世界の違いを解く、それに頷いている松任谷さんが非常に愛らしいと言うか、可愛いなって感じ増しました(笑)
老婦人マリアンヌ鈴木の部屋 :荻野アンナ
中江さん:
マリアンヌ鈴木と言う老婦人を中心に介護する人、される人、介護で儲ける枯れない人々を描いた悲喜こもごもの物語。宝石にはまってみたりとか、見た目の良い異性を手放したがらなかったりとか、老いて欲は失うのではなく、はっきりと欲が現われて来る。その姿が非常に人間臭く、笑ってしまうんですね。最後の現実と言うのも赤裸々に描かれているんですけど、非常にアクティブな新しい介護小説と言いたい一冊です。
これでおしまい:篠田桃紅
中江さん:
今年三月に107歳でお亡くなりになった世界的美術家の篠田桃紅さんの言葉と表現。
これまで多くのエッセイを執筆されて多くの女性に勇気を与えて来たんですけど、亡くなる直前に「これでおしまい」という形で人生を振り返っている。孤独・自由・生きるということ、亡くなる直前まで貫いた人生、美学と言葉が本当に胸に刺さります。 年を取るということは決してマイナスではなく、年を取ってはじめて得られる喜びがあるという言葉が非常に心に残る一冊です。
花は咲けども噺せども:立川談慶
中江さん:
談志さんのお弟子さんは何か執筆されている方が多いなって印象があります。この物語は談慶さんをモデルにしているんですけれども、設定としては談志さんのお弟子さんのお弟子さんになっているんですね。それはエッセイではなく小説、フィクションとして書くということ。ノンフィクションだと現実に引っ張られて描けないことがあるけど小説だと自由に描けるところがある。
はじめての小説の執筆ということですが、現役の落語家ならではのいろんなことが含まれていて、演目や、高座に上がった時など、落語家ってどうやってみなさんを見ているのかっていう描写にリアリティがあって、きっと落語に詳しくない方でも面白いと思います。
シンジケート:穂村弘
中江さん:
今読んでも全く古びてない、むしろ新鮮さを感じるなと思います。口語体の短歌で、あ、これも短歌なのかっていう言葉選びがとても美しい。個人的に私は穂村さんのエッセイが好きでよく読んでいるんですけど、これも人間臭いんですよね(笑)
(ここで中江さんの気に入った短歌を紹介&感想)
中江さん:
装丁っていうのは内容が非常に反映されているものなんですね。本は読むものではあるんですが、装丁の美しさととか面白さって言うのもポイントとして是非手に取ってみていただきたいなと思います。
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<感想>
ユーミンの旦那さんこと正隆さんのエッセイですか!意外な面が発見できそうな一冊ですね。ジェーン・スーさんとの対談も興味深いです。穂村さんの本は作りにちょっと小細工がされていて、これは買った人のお楽しみ。3種類あるそうです。以前読んだ穂村さんのエッセイの装丁も細工がされていて、発見した時の楽しさが思い出されました。今回は読んでいる途中で気づく感じですね。
本日の紹介本、どれも本当に面白そう。んーーどの本から読もうかなと迷います。
それではまた来月!
【過去のブックレビュー】