奇跡:林真理子著のレビューです。
☞読書ポイント
「僕たちは出会ってしまったんだ」って言うけれど....
あーこれは、実話としてではなく、こっそりフィクションとして出して欲しかったかも。実話として残したかったのならば、ご本人の自費出版とか、週刊誌の連載とかでもよかったのではないかな....なにも林さんが書かなくっても。.....なんて、気持ちが強く残った。
梨園の妻・博子氏と世界的に有名な写真家・田原桂一氏の不倫からの結婚の話。自分たちがどれだけ愛し、愛され、運命的な出会いをしたか。それを世に知らしめたいがために書かれたようなものだと感じる。そういうのは日記に留めておけばいいのになぁ。でもとにかく、それを言いたくて仕方がなかったのだろう。
恐らく林さん、持ち前の好奇心と子どもの幼稚園関係でのお知り合いだったということで書かれたのだろう。仕事とは言え、知り合いである方からこのような内容を聴き出すことに抵抗はなかったのだろうか?いろんな恋愛話を耳にしてきた林さんが、この二人の関係が「特別なもの」って本当に思ったのだろうか?いろいろ勘ぐってしまう。
「僕たちは出会ってしまったんだ」という言葉から深い恋愛関係へ進むふたり。互いに忙しい生活を送るかたわら、フランスでデートを重ねたり、博子さんの息子を連れて会いに行ったりとするわけだけど、不倫は不倫、あくまでも気づかれぬように逢瀬を重ねる。息子さんも父親よりも田原さんと気が合ったようで、3人で過ごすことが日増しに多くなっていったという。まるで親子のような関係は、田原氏が亡くなるまで続く。
ということで、途中から「一体私は何を読まされているのだろう?」と言う気分に。これがもしフィクションであったのなら、もっとキレイな部分も汚い深い部分も林さんは描けたはず。けれども実話ゆえに書けない、遠慮した部分も多々あったのではないかと思う。だからなにか美化され、整った恋愛話っていう感じで、全く心に響くものがない。
互いに家族がありながら不倫して結婚した。そういう話なんですよね。たまたまそれが、梨園の美人妻と世界的有名な写真家ということで、ちょっとスキャンダラスな感じもしますが、だからと言って特別な話でもない。それをこんな大々的に実話として作家に書かせるあたりにこの女性の押しの強さを感じる。秘め事は秘め事のまま、ご自身で大切にされた方が....と強く感じました。
読後感がすこぶる悪い(泣)自主出版でよかったんじゃないの?って最後まで思った。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
こちらはパリで別れを経験する辻さんのエッセイ。やはりパリは良くも悪くも恋愛の魔法にかかる街かもしれませんね!