いつか深い穴に落ちるまで:山野辺太郎著のレビューです。
☞読書ポイント
ラストを知りたいがために読む一冊
こちらはアメトーーク!の読書芸人の回で紹介された一冊。 matome.readingkbird.com
小説にはその過程を追って楽しめる本と、ひたすら結末を知りたくて読み続けるタイプのものがある。本書は後者。とにかく結末を知りたくて、途中の話もある意味頑張って読んだ小説だった。
読者にとっても主人公にとっても、ミッションはひとつ。ゴールはひとつ。その目標というか、結末を見届けるまで抜けることはできない。これは「秘密プロジェク」なのだ。
運輸省の若手官僚が敗戦から数年たったある日、新橋の闇市でカストリを飲みながら発案した「底のない穴を空けよう、そしてそれを国の新事業にしよう」と声を上げる。
その穴とは、日本とブラジル間を直線ルートでで行けるようになるという計画。日本とブラジル、双方から穴を掘り始める。主人公は大手建設会社の子会社の広報係・鈴木一夫。
彼は来るべきプレスリリースを記すために、様々な調査をしながら、各国からやって来る要人や実習生たちと交流しながら日々を過ごしている。中盤はこうした話がゆるゆると展開される。あまり特徴的な話はなく、盛り上がりもないのだけど、ブラジルで鈴木と同じ広報係を担当するルイ―ザと鈴木とのロマンスはどうなるのか?そのことはちょっとだけ気になるところ。
目指すは本当にブラジルまでの穴が貫通するのかという一点に気持ちが向く。第一、穴が貫通しても、歩いて行くのか、何かに乗るのか、どうやってブラジルまで行くのか?、誰が最初に行くのか?等々、具体的なことが不透明なままラストへ向かう。
主人公にとっても長い計画、長い道のりであったわけだが、読者もまたそれに付き合ったような感覚で臨む開通式。混沌とした雰囲気をのなか、いざ!
......ラストはとても話せませんが、いろんな意味でわたしも弾けました。
こういう小説もあるんですねぇ。好きとか、嫌いとかを超越しちゃったなにかがあるような気がするな。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
穴を掘っていくことになにかロマンを感じるのか?穴を掘る小説は世界でも結構書かれている。