憐憫:島本理生著のレビューです。
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感想
理解者が居ない、居場所がない、そんな不満を補ってくれる人とは
読んだことのない作家の恋愛小説って自分にとって結構な冒険です。で、本書はなんで読むことになったのかというと、王様のブランチの放送を見て「これはすごい小説なんだろう」と思ったから。それもこれも、島本さんをインタビューした大友花恋さんが、目をうるうるさせながら、その面白さを語っていたからなのです。
その時のインタビューの様子はこちら
花恋さんがどうしてそこまでのめり込んだのかは、主人公女性と住む世界が似ているということで納得なんですけど、さて、自分はそこまでこの小説にのめり込めたかというと、それが全然でした。ただ、結末はちょっと意外というか、ミステリー感覚として読んだ方がむしろ面白かったかも?...なんていらぬことを考えたり。
主人公の女性は子役から芸能界で生きる売れない女優。アラサー、既婚という彼女も、幼いころから稼ぎがあったものだから、家族や親せきに無心されたりと苦労もあった。結婚生活もどこか空虚。そんな彼女が飲み屋で柏木とい男性と出会う。
互いの肩書も明かさず一緒に過ごす居心地の良さにどんどんハマって行く.....という、いわゆる不倫関係がはじまるわけなのですが、如何せん、この柏木という男の人格がつかめない。何者なのか、そして本当に彼女に対して愛情があるのか?と。舞い上がっちゃってるのは、女性だけで男性はなーんかクールすぎる。
もうこうなったら燃え上がっちゃえばいいのにーって、なんとかこの不完全燃焼的な様子から抜け出したくてそう思ったりもした。
そんな悶々を打破するかのごとく、かなり衝撃的な事実が判明する。この展開があったから少しは読んだ甲斐があったと思えたものの、恋愛小説としては、やはり自分にはまったく肌に合わなかった。
結局、彼女は自分のキャリアに対しても、家庭に対しても不満があった。そして、なにより自分の理解者が居ない、居場所がない、そんな不満を補ってくれる人を求めていたってことだけは理解できたんですけどね。でも~、、、みたいな(笑)
好みの問題なのかは分かりませんが、胸がきゅんと来る切なさがちっともなかったのが残念。冒頭に記した王様のブランチの花恋さんは、やはり芸能人という立場で読んだから、涙が止まらくなるほど共感できるものがあったのだろうな。まぁ、島本さんも「読んだ人全員に理解されようと思って書いていない」とおっしゃっている。本当、その通りだと感じた。
あと、読み時の年齢っていうのもあるんだろうなと思う。30代が遠い昔だった者からすると、色々透けて見えてしまう部分があるというか....ね。(いやぁ~ね~。)まぁ、しょうがないね。
りすさんからのNEXT本の紹介
直木賞を受賞した千早さんの恋愛小説だよ。最近読んだ恋愛小説の中でのお気に入り。ハッピーエンドではないけど、生涯忘れられない恋。胸がズキズキ、キュンキュン、しばらく小説から抜け出せなったもの。