天の花 なでし子物語:伊吹有喜のレビューです。
☞読書ポイント
おしまいかぁ、おしまいなのね。
「なでし子物語」のキラキラした時間、2部の「地の星」ではヨウヨの頼もしい姿を目にし、そして3部の「天の花」。最終作はもっと時間が経過した話になるのかと思いきや、2部の話からまた過去に遡る。
このことによってようやく現在と過去がひとつに繋がるというニクイ構成になっていました。まさか3部作だとは思わず手にした「なでし子物語」でしたが、ここまでくるとなかなかの充実感があります。
本書は一部のキラキラした雰囲気がまた戻って来た感じで「常夏荘」を舞台に話が進みます。繊細な気持ちを持つ少女・耀子、天真爛漫な立海、そして今回は照子の息子・龍治の存在が大きく話を揺さぶります。
懐かしい常夏荘の雰囲気を大きく噛みしめながらヨウヨと立海の可愛らしい会話に胸をキュンキュンさせる半面、龍治の不審な行動や言動に一体この人はどういう人なのだろう?とハラハラさせられる。
後半にいくほど、この三人の生い立ちから来る「影」が色濃くなり、切ない風味が小説のあらゆるところから湧き出す。そして大きな変化、耀子が常夏荘を去ることになる。
光と影が交差しながらラストへ向かうのですが、結末は賛否両論だろうなぁ。と言うか、自分のレビューではこうなることは2部で知っていたはずなのに、再度驚いてしまった(苦笑)ヨウヨはそっちに行くのかと、こういう結末になったから余計になんだか切ない影がどこまでも.....消えないのであった。
というっことで、このレビューは「なんのことやら」というものになってしまったが、「なでし子物語」ファンの方なら、なにを言わんとしているか、きっと理解していただけるはずです(笑)
いつまでもヨウヨとリュウカのキラキラした時間が消えて欲しくない......。
過去の感傷に浸っているのはむしろ読者の方で、小説の中の人々はもうとっくに動き出しているのかと思うと、ちょっと置いてけぼりになった気分でもある。
ということで、おしまいかぁ。淋しいね。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
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