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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】東京をんな語り:川奈まり子

 

 

 東京をんな語り:川奈まり子著のレビューです。

 

これまで見てきた東京の風景が幻想的なものに見えてくる

 

怖い話を集めた本ということは間違いないのですが、これはパターンが変わっているというか、ちょっと風変わりな構成だなぁと感じました。「幻想ルポ怪談」というジャンルのようです。

 

歴史に関する話、川奈さんご自身の話、ある方の話など、一つのお題ともいえる話からバトンタッチするように次々と話が続いていく。なかなかそのパターンに慣れなくて、終始戸惑いましたが、話自体は面白く、怖い本にありがちな「慣れからくる中だるみ」ということはなかった。

 

いわゆる幽霊は、なんらか自分と関係があった人なのだろうなぁと感じるシーンが多い。川奈さんが感じたもの、見えたものからは、やはり川奈さんご自身と関係のあった方々なのだろう。それはきっと「そうだ」と自身が思いたいからなのかもしれない。本書を読んでいくと、そう思うことが自然な気がしました。(怖いけど①)

 

明治の三大毒婦である夜嵐おきぬ、花井お梅、高橋お伝、講談物で著名な妲己のお百などを登場させながら、東京の様々な場所で起こる現象などを語っていく。

 

 

 

 

青山の「タクシー幽霊」の話を皮切りに、ひたひたと迫りくる感じが気分を盛り上げます。これまで見てきた東京の風景がやけに幻想的な雰囲気に感じてきます。なかでも印象的だったというか、ちょっと寒くなったのは「明治座」の話かな。

 

明治座はわたしも何度か行ったことがあるのですが、なんだかわからないけど寂しい場所だなぁと強く感じた記憶がある。気のせいと言ってしまえばそれまでなんだけど、いまだにその感覚が残っていることがむしろ妙で...。そんなことを感じた「明治座」とその界隈。本書を読んで「あぁ、やっぱり」と。感じたものはあながち間違えではなかったことが解った。

 

場所との相性もあると思うのですが、どうも長居したくない場所とか、そこを通ると気分が沈むとか....。そういう場所の歴史を知ると納得いくことって結構ある。今回はそれが「明治座」の話でした。

 

東京は戦争や震災で大勢の命が失われた土地でもある。私たちの日常も、そうした無念の思いをした人々の悲しい過去の上に成り立っている。だから、なにが見えてもおかしくないと思った方がやはり自然なのかもしれないなぁ...(怖いけど②)

 

ということで、ちょっと新鮮な作りの怖い本でした。川奈さんご自身のことも赤裸々に語られているので、著者がどんな方なのかもこの本を読むとよくわかります。

じっくり読める「怖い本」として、同著の別の本も読んでみようと思った次第です。(怖いけど③)