懐かしい家 :小池真理子怪奇幻想傑作選1:小池真理子著のレビューです。
☞読書ポイント
考えるのも怖ろしい。次は誰なの?
怖い、小池さんの怖い話は心底凍えるものがある。短編集なのですがどれもこれもラストにドスンと落される。
「今度は誰に?」「今度は何が?」と読み進めていく。なんとなくその怖さのパターンというものが読者の中で出来始めて、こうなるだろうという予想を立てていく。しかし、ラストはその予想を覆される展開、「ええーーそっち!!こわっ」となるのです。
ものごとには科学的に説明のつかないことが起きるということをわたしたちは知っている。そんなひとつに「予兆」というものがある。本書にはいくつかの「予兆」が登場する。最初は「気のせい?」とだれもが思う事柄を体験する登場人物。「偶然」を何度か経験するうちに、これは単なる偶然ではないと思い始めやがて....という展開に。
この順を追ってやってくる「予兆」めいたものは、何年にもわたって起こったりする。すっかりそんなことを忘れていたら「また!」と、記憶をよみがえらせたりするものだから質が悪い。
そして、その予兆は人の「死」として結果が出る。ある者は、妙なところに現れる「蛇口」が見えたり、ある者は特定の「タクシー」に乗った時に気づく。
この徐々に迫りくる恐怖たるや、BGMがあったならさながら「ジョーズ」の音楽がかかり、ラストはまるで「パンッ」と電球が切れるかのように幕を閉じる。そのラストも意外性があり、心底怖さを味わうことになる。
ということで、日常のあらゆるシーンに潜む話は、なんとなく自身に起きてもおかしくないような自然さがあり、それゆえに怖い。妙なことが続くときは、自分の身に何が起きているのか?ちょっと考えなければと思ってしまいました。
やはり小池真理子の怪奇本は怖い。けれども時に美しかったり、幻想的だったりするものだからまた読みたくなるんですよねぇ。今年の夏はもう一冊読もう!
【つなぐ本】本は本をつれて来る