まつらひ :村山由佳著のレビューです。
祭りと性の高揚感、そして.....
短編集です。1話目からもう目を疑うような「うわっ、そりゃないわ。」という結末に胸騒ぎが止まりません。
田舎の農家。幸せな家族の風景に安心して読んでいたのに、村祭りに出かけたことから一気に闇のなかへ放り込まれたような世界へと転落していく。何も知らず、普通にあった幸せがガラガラと音が聞こえて来そうなほどの崩れ方。すでになす術もなく、「そんな...そんな...」と呆然。
そうだった、村山作品に安堵するようなものってそうそうないということを思い出し苦笑い。しかし、これはさすがにヤバイですよ。
龍神まつり、蘇民祭、相馬野馬追など、各地のお祭りを登場させながら綴られる男女絡みの話。祭りというちょっとした高揚感から浮かび上がる各男女の姿は、危ない関係も含め聞き捨てならないものが多い。どう気持ちを収めるか、読者自身の気持ちをも巻き込んで物語は静かに終わりを迎える。
最終話は父娘という設定が設定なだけに、読んでいて辛かったけれども、最後はちょっと救われるかな...。ということで、全体的にちょっと陰鬱でありました。花房観音さんと桜木紫乃さんを足して2で割ったような感じがしないでもない。またもや変化のあった村山作品。こういうトーンの長編も読んでみたいです。