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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】土葬の村:高橋繁行

 

 

 土葬の村:高橋繁行著のレビューです。

土葬の村 (講談社現代新書)

土葬の村 (講談社現代新書)

  • 作者:高橋繁行
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: Kindle版
 

 

 日本はまだまだ色々な形で葬儀が行われている

 

日本の伝統的な風習や儀式などの本を読むのが好きで、そろそろだな...と思っていると、面白そうな本がわたしを呼ぶ(笑)ということで、こういった本を1年に一回くらい発作的に読むことがある。

 

でもこれらの本を読んでいる時は、一種独特な雰囲気に呑まれるというか、異次元的な感覚で、想像するととても怖かったり、でも、覗いてみたい、知りたいと妙な好奇心が生まれたりと、とても不思議な気分になる。

 

もちろんこれらの話は作り話でもなんでもなく、実際あったことや、現在も続いていることではあるのだけれども、自分の今ある環境からものすごく遠いところにある話に見える。

 

わたし自身「土葬」が日本で行われているのかも曖昧だった。「死んだら土葬がいいな」って言ってた友達が居たけど、「日本じゃ無理でしょ」って、笑いながら話してたことを思い出す。でも、これはどうも無理ではないことがこの本を読むと分かる。ただ、現在の日本は99.9%が火葬だそうで、土葬を希望しても色々大変であることは確かだ。

 

本書ではそんな希少である「土葬」が現在でも残っている地域を丁寧に取材し記している。そこから火葬や風葬などへ話を広げ、他では聞けない大変貴重な記録となっている。内容・構成は以下の通り。

はじめに
第一章 今も残る土葬の村
第二章 野焼き火葬の村の証言
第三章 風葬 聖なる放置屍体
第四章 土葬、野辺送りの怪談・奇譚
おわりに

 

とにかく、目からウロコな話です。

土葬に関しては、実際かなり細かいルールがあり、それを実行する手間は大変なもの。人が亡くなって、当たり前のように業者に任せている葬儀が普及したのも納得。湯灌から土葬の穴掘り等々、細かい儀式を自分たちで行うのは大変なものがある。そのやり方も地域によって様々。頭の中でその風景を想像しながら読み進める。

 

 

 

途中、海外の葬儀のことも書かれていた。興味深かったのはインド。よくガンジスに死体がプカプカ浮いているって話を聞くけど、あれは一体どういうことなのか?ってずっと思っていた。だって、ガンジスの川沿いで火葬しているシーンも見る。火葬が出来ているのに何故に??って。この答えが明らかになり、ちょっとすっきり。しかし、その理由が結構斬新というか、いかにもインドって感じで。そういうすべてのものを飲み込むガンジスの偉大さも改めて感じた。

 

話は戻るが、本書は土葬だけでなく、火葬に関してもかなり細かく綴られていた。あと、与論島の「風葬」についても知ることができた。これらもある意味衝撃的で、驚かされる場面が多かった。

 

数は極少ではあるが、日本はまだまだ色々な形で葬儀が行われている。継承する者も今後少なくなり、やがてこれらの葬儀も消えて行くだろう。しかし、日本の弔い文化をしっかり記憶に残しておく意味でも、こういった記録は大変貴重である。本書にちょくちょく登場する柳田國男の「葬送習俗語彙」も、どんなものか一度目を通してみたいと思った。