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【レビュー】ムーンライト・イン:中島京子

 

 ムーンライト・イン:中島京子著のレビューです。

 

  本記事はKADOKAWA文庫のWEBマガジンカドブンに掲載されました!

kadobun.jp

ムーンライト・イン

ムーンライト・イン

  • 作者:中島 京子
  • 発売日: 2021/03/02
  • メディア: 単行本
 

 

おとなだって嫌でも取り組まなければならない宿題みたいなものがある

 

(本が好き!の献本書評です)

気が進まなくて先延ばしにしていること、何かありますか?きっと誰にでもひとつやふたつあるんじゃないかと思います。「やらなきゃ、やらなきゃ」と思いつつ延ばし延ばし。あれれ、デジャブ?これってなんだか夏休みの宿題と一緒だなぁと。

本書はそんな時間を過ごしている大人たちのある一時を綴った小説。
年齢、国籍、家族、状況が異なる男女5人の過去と未来が描かれている。最初はありがちなストーリーかと思ったけど、読み込むほど登場人物たちの過去の出来事が明確になって来て、なんとも味わい深い話へとどんどん惹き込まれてゆく。

ムーンライト・インは、かつては賑わっていたペンション。今は廃業し、オーナーの老人と、3人の女性たちが共に暮らしている。そこにひとりの若者・栗田拓海が、自転車旅行の雨宿りに飛び込んでくるところから物語は始まる。

その日は宿泊、そして屋根の修理を頼まれた拓海は張り切って直すものの屋根から落ちて骨折。治るまでここで過ごすことになった。

なんとなくよそよそしい女性たち。一体なぜ彼女たちは共同生活をしているのか?実はひとりひとり結構重たい事情や秘密を抱えている。

 

 

 


そんな個々の事情を織り交ぜながら、日本とフィリピンのミックス、マリー・ジョイと拓海の恋愛話が生まれる。マリー・ジョイはビザの関係もあって、フィリピンへ帰国する決断をする。そんなギリギリの時間の中で拓海は彼女に恋をする。

そのやり取りが本当にもどかしいったら。不器用な青年の恋愛を存分に楽しませてもらいましたが、二人には最後の最後までハラハラさせられっぱなし。「ガンバレ、拓海!」と思わず文字に向かって念を送るわたし(笑)

一方、高齢オーナー虹さんと、車椅子で生活している同じく高齢の新堂かおる。この二人の過去も徐々に明かされる。年季の入った二人の過去はとても深い。

残るもう一人は津田塔子。彼女にはちょっと恐ろしい過去がある。どうなってしまうのだろうと、読者にとってもこの人の過去は大きなお荷物。

皆それぞれが抱えている問題についてはある程度知っている。その上での共同生活は役割分担もできていて、程よい距離感でいたって順調。また、自然に囲まれ、美味しい食材にも恵まれ、のんびりした雰囲気が漂っているものだから、状況が悪化してもどこかケセラセラ的な感じなのです。

しかし、お休みはいつまでも続かない。それぞれが、それぞれの形で、ちょっと遅れた宿題に取り組んでいくことになる。そのほとんどの問題は家族との問題。親子間の問題は、子が大人になってもいろいろと切ない部分もあり、そういった関係をどう乗り越えて行くか、これは全ての大人の宿題でもあるように思える。

それでもきちんと問題に向き合い、自分に納得がいく道を切り開いていく女性たちの姿はなんとも清々しいものがあった。

やがて終わると分かっていても、いつまでもそこに留まっていた気持ち。目の前にある宿題に目を瞑ってしまいたくなる気持ち。遠い昔にあった夏休みと今が重なり合うような良い作品でした。

 

 
 
 
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