樽とタタン:中島京子著のレビューです。
自分の居場所って大事です
ん?ダジャレ好き?中島さんったら!ってまずタイトルを見て苦笑い。
そういえば...「妻がしいたけだったころ」を思い出す。
たぶん、中島さんは相当タイトルに情熱を注いでいらっしゃるのではないだろうか?(笑)ということで、まったくどんな内容かわからないまま読み始める。
おばあちゃんっ子として育てられて一人の少女。
そのおばあちゃんも亡くなり、放課後の過ごし方が変わった。
学校生活があまりうまくいっていない彼女の見つけた居場所はかつておばあちゃんと一緒に行ったことのある喫茶店。
喫茶店には大きな赤い珈琲樽が置いてある。そこが彼女の唯一の居場所になるのだ。
彼女はそこでタタンちゃんと呼ばれ、学校が終わるとここへやって来て樽の中を定位置とし、お母さんが迎えに来るまで大人たちの会話に耳を傾ける。ちょっと風変わりな大人たち。毎日いろいろありそうな大人たちの日常をウォッチング。やがて常連さんたちとも自然に会話をするようになる。
様々なエピソードは彼女が大きくなってからの回想という形で語れているので実際のところどうであったか曖昧ではある。だけれどもその曖昧さがちょっとした不思議な雰囲気に仕上がっていて趣があるのです。
みんなちょっと変わっている大人たちだけれども、タタンちゃんを少しも邪魔に思ったり、子供扱いするようなこともなくタタンちゃんはタタンちゃんで大人たちが醸し出す空気をうまく読み取っている。お互いがみないい感じで同じ空間を共有している。そしてなによりこういう居場所が彼女にあって良かったなぁと思う。
なにがどうって話ではないんだけれども、赤い樽の中から見える風景や今となっては会うこともない人々との思い出は、いつまでも不思議と記憶の中にうっすらと刻まれている。
....と、まるで私がタタンちゃんになってしまったかのように今感想を書きながらこの物語の過去を振り返っている。





