新しい恋愛:高瀬隼子著のレビューです。

☞読書ポイント
感想・あらすじ
高瀬さんの恋愛にまつわる短編は、絶妙なページ数ですっと完結するのが心地良い。でも内容は相変わらずどこか落ち着かないというか、全体的に登場人物が「なにかしでかすのではか?」という小さなハラハラと好奇心が入り混じった感覚を持って読み進める感じがある。要は読者も緊張感を強いられるというような....。
5つの短編集です。男女の恋愛がらみの話なのですが、どれも何かひっかかりがある内容だ。例えば「花束の夜」では、仕事を指導をしてくれていた先輩の送別会の夜の話。ふたりはプライベートの付き合いもあるようだけど真剣交際と言った雰囲気はない。一緒に過ごす時間は楽しいけど、先輩男性はちょっと不誠実.。それを分かりつつも好きになった彼女という構図。
送別会でもらった花束を要らないからと、先輩は後輩女性に花束を押し付け一人去っていく。もらった彼女はその花束を持って帰る途中、様々な思いに駆られ、ある行動を起こす。これがまたちょっと不気味でもあり、可笑しみでもあったりする。先輩に寄せる想いもこのラストでなにか決着がついたような爽快感が。翌日の先輩男性の戸惑う様子が目に浮かぶ。
誰もが考えてしまうのは「いくつも数える」ではないかな。恋愛や結婚における年齢差って意味があるのだろうか。本作では50代の課長の「年の差婚」をきっかけに、社内はその話で持ち切りなる。
一回り違うとか、親子ほどの差があるとか、これはもう「あるある」としてどこにでも転がっている話ではある。最近ではあまり年の差婚も珍しくなく、騒がれることも少なくなったけど、昔は結構話題になったりした。小柳ルミ子さんの年の差婚の時はまだ珍しく、自分も驚いたことを思い出す。これらを「気持ちが悪い」と思うい人も少なからずいる。

果たしてこのような感情は、自分の年齢によって変化するものか。上は何歳まで、下は何歳までの年の差ならOKなのだろうか、男女によっても違うのか?.....、など、主人公の男性の戸惑いがこちらにも移って来て自分もぐるぐる考える。
ということで、様々なパターンが登場しますが、どれも指にできた「小さなささくれ」を、すっと剝がすような話だなぁ~って思いました。剝がす時に小さく漏らす「イテテテ.....」ってなるあの感じ。そんな微妙な痛みをヒタヒタと書き綴る高瀬さんの作品って、ほんとクセになるなぁと思うのであった。
高瀬隼子プロフィール
1988年愛媛県生まれ。立命館大学文学部卒業。2019年、「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞し、デビュー。2022年、「おいしいごはんが食べられますように」で第167回芥川賞受賞。2024年、『いい子のあくび』で第74回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。著書に『犬のかたちをしているもの』『水たまりで息をする』『いい子のあくび』(集英社)、『おいしいごはんが食べられますように』(講談社)、『うるさいこの音の全部』(文藝春秋)、『め生える』(U-NEXT)がある。(Amazonより)






