にがにが日記:岸政彦著のレビューです。
☞読書ポイント
感想・あらすじ
社会学者、岸先生の日記です。出版される本はボリューミーといった印象の岸先生。まぁ、日記は気軽に読めそうね~って思っていたら、なんと日記も7年間に及ぶ記録とのこと。やっぱりある意味ボリューミーでした。
とは言え、毎日書くタイプではなく時間のある時に書かれているので、結構間が空いたりしている。超マイペースです。
大学の教授と言えば、やはりちょっと上の存在。わたしの担当教授は、気軽に話しかけられる雰囲気はなかったのですが、岸先生と学生たちの関係はそんな垣根みたいなものが全くない。学生と先生がわちゃわちゃ雑談してたり、卒業後もお付き合いがあって、教え子の結婚式に参加したり、呑みに行ったりと、いいなぁと思う。最近はこういう風潮なのかな?それとも岸先生のお人柄なのかな?昭和に大学生だったわたしにはちょっと羨ましいぞと感じました。
あ、そういえば、昔、先生の小説のレビュー投稿した時、Twitter(現・X)を通して見つけてくださり、お礼の言葉をいただいたことを思い出しました!やっぱり、お人柄なんだろうな....。
最初は寝る前に少しずつ読んでいましたが、ページを追うことに岸先生にハマっていく自分が居ました(笑)このゆるいテンポにやられる。何気ない一言に「ぷっふ」って笑ってしまう。大笑いではなく「ぷっふ」って笑う。
このゆるい感じが心地よい。なんとなく昭和。気軽に仕事をさぼる....なんて言葉が教授である岸さんから出るところに人間味があり、魅力を感じます。
プライベートな部分も隈なく書かれています。奥さんの「おさい先生」との微笑ましい関係性も魅力的です(イラストは奥様の齊藤直子さんが描いています。こちらもほのぼの可愛いイラスト)そして、岸さんの家族でもあるネコ二匹。20年以上も一緒に暮らしていたとのことですが、そのネコちゃんとの最期の時は涙、涙です。岸先生もおさい先生もずっと泣いている。ことあるごとに泣いている。その様子を読んで、こちらも泣いてしまう。ペットとの別れの喪失感は底なしに深い。
この7年で岸先生の仕事量もどんどん増えて行く様子も。小説も文学賞を受賞されたし、社会学関連の本も出版。途中、お休みを取りながらもコロナ禍での奮闘ぶりも覗けます。
あー、今、大学生に戻れるなら、社会学を学びたいな~。そして、岸先生のもとで研究してみたいなー。食パンは「超熟」が好きで、マックのPCの古いモノいっぱい持っているとか。(どうでもいい情報だけど、これが意外に良い)そして、ネコちゃんのことを思い出して泣いてしまう。そんな人間味ある先生っていいよなぁ。
そうそう、岸先生の面白さって、ほかに似たような人がいたなぁ~って、ずっと思いながら読んでいたところに、又吉直樹さんのお名前が登場。そうだ!そうだ!と膝を打つ。ちょっとかぶる部分があるんですよねぇ。独り言ぶつぶつ言っている感じとか(笑)
お二人の対談、見てみたいな~。どんなテンポなんだろう!?あと、雨宮まみさんのお名前も登場していたな。エッセイもお二人の対談も大好きでした。先生がこうして今でも忘れずお名前をあげてくれるは嬉しい限りです。
2017年から2022年までを読み終えて感じたことは、長いようであっという間。色々あったわりに、過ぎてしまうとあっという間という印象。2018年は暑かった!ってことは、ものすごく覚えています。
そろそろまた小説も読みたいな。写真もいっぱい見たい(写真もかなりファン)。写真に関しては、武田花さんとのコラボとかやって欲しいなぁ~って、常々思っています。なんとなくお二人の写真には共通する空気が流れている。寂れた町とか、建物とか。ガランとした雰囲気とか。そしてお二人ともネコ好き!いいと思うんだけどな。出版社の方、もしこのブログに気づいたら、是非お願いします!
岸政彦プロフィール
1967年生まれ。社会学者。著書に『同化と他者化――戦後沖縄の本土就職者たち』『街の人生』『断片的なものの社会学』(紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞)『ビニール傘』『マンゴーと手榴弾――生活史の理論』『図書室』『地元を生きる――沖縄的共同性の社会学』(共著)『リリアン』(織田作之助賞受賞)『東京の生活史』(編書、毎日出版文化賞、紀伊國屋じんぶん大賞2022受賞)『生活史論集』(共著)『沖縄の生活史』(共編)など。(新潮社HPより)
中瀬ゆかりのブックソムリエでも紹介されました
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