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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】大阪:岸政彦・柴崎友香

 

 

 大阪:岸政彦・柴崎友香著のレビューです。

大阪

大阪

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大阪loveがいっぱい詰まっている。もっと知りたくなる大阪!

 

大阪のことは知っているようで、実は何も知らなかったのだなぁということを、最近薄々と感じている。大阪にいる親戚に出す手紙の住所の地名に勝手に親近感を寄せていたけれど、どんな場所なのか知らなかったりする。ちなみに大阪へは3度訪れているが、USJと、あとは京都から空港へ行くために少し立ち寄ったとかぐらいなものだ。その時の印象は「大阪のマックの客席はにぎやか」ってこと。とにかく人々がすごい勢いでおしゃべりしている。今はどうなのだろう。あの時の光景は今でも覚えている。

 

わたしが抱く大阪のイメージは、やはり一般的なものばかり。関西弁、お笑い、通天閣、粉もの、道頓堀。こうして挙げてみると、あれだけの大都市に対して、なんて小さなイメージしかないのだろう。興味がないわけでもなく、大阪は楽しそうという漠然としたイメージもある。なのに、どこに何があるとか、どんな地域にどんな人々が住んでいるのか等々、土地勘というものもみごとにない。

 

そんなわたしだけれど、岸さんの作品、特に小説を読むようになってから少しばかり大阪の地図を見たり、東京と照らし合わせてその土地のことを考える機会が増えた。吹田市がそのひとつ。名前くらいしか知らなかったけど、いつか行ってみたなって思う場所のひとつになった。こうしてピンポイント的に好きな場所が増えていくことは非常に楽しい。

 

 

 

ということで「大阪」。本書は岸さんと柴崎さんが順番に大阪のことについて語っている。内容は大阪云々というより、そこに暮らす人々のこととか、柴崎さんは生まれ育った場所(現在は東京在住)だから、「昭和の大阪」の様子についてもたっぷり語っている。そのノスタルジー感と装丁画がとても合っている。

 

岸さんの話は、行ったこともない場所だけど、ワーーっとその風景が広がっていくような心地よさがある。一緒に散歩して、大阪の空気を吸っているような。そして、その先で出会う大阪の人々のひとつひとつの生活や人情に触れ、そしてまた一歩大阪の中に入っていく感じ。ひとつひとつのエピソードが深く、吞みながら聞きたい話が多い。岸さんの話はアルコールを呼ぶ雰囲気がある。

 

街とは、住んで好きになることもあれば、離れて恋しくなることもある。これはなにもお二人に限ったことではないけれど、誰にでもそういう場所との「相性」みたいなものってあるんだろうねぇ。

 

猛スピードで変わってゆくのは大都会の宿命みたいなものだけど、変わりゆく様々な街の姿を心の中に刻みながら、その土地を愛し、生きる。そんなものが伝わってきました。大阪を知っている人も知らない人も迎え入れてくれる一冊でもありました。