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【レビュー・感想・あらすじ】わたしに会いたい:西加奈子

 

 

わたしに会いたい:西加奈子著のレビューです。

☞読書ポイント 

自分ってなんだろう?何者なんだろう?今の自分に迷いがあったり、誰かの言葉に傷ついたりした時に強い味方になってくれる1冊。死ぬまでずっと寄り添ってくれる存在は「わたし」だということを改めて感じてみよう。

 

感想(ネタバレなし)

わたしに会いたい (集英社文芸単行本)

わたしに会いたい (集英社文芸単行本)

 

 

とても近い、自分の近くに居て、いつも見守ってくれる存在。それは「わたし」。でも「わたし」は、どんなに会いたくてもなかなか会えない、出会えない存在だ。....一体、何言ってるの?って話ですが、本書を読んでいると、わたしがどんどん近くに居ることを実感する。それを強く感じられた作品は表題作の「わたしに会いたい」です。

 

「ドッペルゲンガー」を用いて「わたし」に会いに来る「わたし」を描いている。これがまた、会いたくてもなかなか会えないというね。しかも、ドッペルゲンガーって、本人が自分を見たら死んでしまうとかいう話もありますからね。しかし、本作はそんな怖い話ではなく、「わたし」を救ってくれるヒーローは「わたし」であることの頼もしい存在として現れる。このあたりの設定は、西さんならではの個性が発揮されている。

 

生まれてから死ぬまで「わたし」と「わたし」は一心同体。そして何よりも強い味方なんだと、ちょっと自分が愛おしくなるような話でした。

 

 

 

 

そして「あなたの中から」も印象に残る作品だ。自分の自信のなさって?コンプレックスってどこから来るのか。例えば他者から言われた言葉の数々が影響していることって多々ある。ここでは、特に女性たちが言われる続けるであろうあらゆることが、この一編に詰まっている。「あー私たちは、こんなにも違和感のある言葉を日々受け続けながら生きている、生きて来たんだなぁ」とため息が出る。

 

 

 

西さんがこんな風に人の成長段階別に受ける不快感を事細かに羅列してくれたことによって、女性たちの生きづらさがはっきりと理解できるのだ。これは、むしろ、古い考えを持つ大人や、男性にも読んでもらいたいなぁ。結構な言われようなんですわ。これが。

 

 

 

 

 

後半は、抗がん剤治療をする主人公の姿が描かれる。病に侵された身体と向き合う「あなた」が「あなた」になっていく、戻っていくような感覚を覚える内容だ。結末の解釈はちょっと難しいけど、自分の身体を愛おしく、そして一番労ってあげたい、自分だけのものということを感じさせられる話でした。

 

全体的にどの作品も自分に向かってくる、自分を見つめている、自分を大切にしたくなる。上手く言えないけどそんな気持ちになる作品たちでした。

 

西さんが大変な病気に罹ったからこそ書ける内容とも言えますし、読者としてもそういう目線で読んでしまいがちですが、いや、これらは西さんがもともと持っていらしたテーマのようなものがしっかり根を下ろしていると言ってもいいと思います。もちろん、病気の経験から感じたことも加わって、より強く「生きること」が、ダイレクトに伝わって来るものがあるのは確かです。

 

辛い話でも、ちょっとしたユーモアを交え笑かしてくれる。でも伝えたいことはきっちり読者に伝わるよう言葉を重ねる。読後はいつもほんのり気持ちが温かく、そんな西さんに、本当にいつもありがとうって気持ちで本を閉じるのです。

 

 

 

西加奈子プロフィール

1977(昭和52)年、イランのテヘラン生れ。エジプトのカイロ、大阪で育つ。2004(平成16)年に『あおい』でデビュー。翌年、1 匹の犬と5人の家族の暮らしを描いた『さくら』を発表、ベストセラーに。2007年『通天閣』で織田作之助賞を受賞。2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞受賞。その他の小説に『窓の魚』『きいろいゾウ』『うつくしい人』『きりこについて』『炎上する君』『円卓』『漁港の肉子ちゃん』『地下の鳩』『ふる』など多数。(新潮社・著者プロフィールより)

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