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【感想・あらすじ・レビュー】ルミネッセンス:窪美澄

 

 

ルミネッセンス:窪美澄著のレビューです。

☞読書ポイント 

全体的に鬱々とした作品のなかに、ちょっとしたホラーっぽいテイストが加わっている。寂れた団地とその周辺に生きる人々の姿を描く。人生の深みを増していく中高年、窪さんと同世代には特に刺さる話が多め。

 

感想・あらすじ 

ルミネッセンス

ルミネッセンス

うむうむ、これもまた窪さんの新境地的なものを感じずにはいられない作品。というのも、心をえぐられるような痛みを感じつつも、今回はちょっと怖い、ホラーチックな面もあったりで驚きました。

 

5つの短編集。「トワイライトゾーン」「蛍光」「ルミネッセンス」「宵闇」「冥色」というタイトルから、どれもなんとなく光的なものを感じさせらる。でも、内容とタイトルがわかりやすい形で連動している感覚があまりない。読後、これらのタイトルを見てどの作品だったか?と訊かれたら、ちゃんと答えられない自分がいる。それくらいタイトルが自分にとってはちょっと漠然としたものに感じられた。

 

繋がりとして明確なのは、どの話も舞台が一緒ということ。古い低層の団地ということで、歴史がある分、この団地は色々な過去を背負っている。例えば、お化けが出る噂とか。特にこの団地内にある「池」は、かつて子供の悲しい事故があった。

 

 

 

 

そういったことを、たまたま出席した同窓会で知った一人の女性は、自身の不思議な体験を含め複雑な気持ちになる。子供とき知らなかったモヤっとしていた部分が、大人になって事実を知り明らかになったときの衝撃と言ったら。いろんなことを思い出しながら話が繋がっていく感じがなんとも...。それが良いことや楽しいことだったらいいんですけどねぇ。

 

今回の短編のなかで一番窪さんらしさを感じたのは「宵闇」。右目の下に赤く盛り上がったケロイドの傷跡のある花乃。交通事故で出来た傷はのちに「いじめ」に繋がっていく。母子家庭で暮らす花乃。幸いママは花乃がいじめられていることも知っているし、「そんな学校なら行かなくてもいい」と言ってくれている。

 

近所にはママの父親が住んでいる。花乃はこのおじいちゃんのことがちょっと苦手なんだけど、ママに様子を見に行って欲しいと言われ行くことある。ママとおじいちゃんの関係には確執があり、また、花乃は花乃で別居している父親との関係が上手くない。

やがて花乃へのいじめも日々ひどくなっていく中、このおじいちゃんが意外な形で頭角を現す。

 

体を張って孫を守おじいちゃん。ちょっと格好いいぞ!けれどもママにとっておじいちゃんは決して良い人ではなかった。そんな複雑な各々の心模様と、ほんのりと出口に灯るかすかな光をが、「キマシタ!窪作品そのもの!」と言わずにはいられない読後感でした。

 

いつもここに行き着くのだけど、窪作品は、少年少女と老人が登場するものが個人的にすごく好きだなぁ。思春期くらいの子どもの苦悩を描くのが本当に上手いと思います。花乃ちゃん、今はいじめられてはいるけれど、ママとおじいちゃんと言う最強の味方がいるんだから、きっと大丈夫。素敵な未来が彼女に訪れることを願っています。

 

ということで、「団地」の作品も続きますね。窪さん、本当にいろんなジャンルにチャレンジしているなぁ~って感じます。今回はちょっとホラーな面もありましたが、こうして感想を書いていると、やはり根底にある軸はちゃんと存在しているものだと感じました。次回はなにかな~、またびっくり作品が登場すのか?楽しみです。

 

 

 

 

ルミネッセンスってなに?

「物質が吸収したエネルギーの一部、または全部を光として放出する発光現象。」なんですって。化学用語みたいでちょっと難しいけど、光に関係する言葉なんだね。

窪美澄プロフィール

1965(昭和40)年、東京生まれ。2009(平成21)年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。また同年、同書で山本周五郎賞を受賞。2012年、第二作『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞。2019(令和元)年、『トリニティ』で織田作之助賞を受賞(Amazonより)

 

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