(単行本)私はスカーレット上:林真理子著のレビューです。
☞読書ポイント
感想・あらすじ
上巻から待つこと1か月。意外にも早く下巻を読むことが出来ました。スカーレットのこの先に暗雲がたちこめていた上巻。とは言え、なんだかんだとハッピーエンドでしょう?そこに行くまでの波乱万丈があってこその結末だよねぇ~....なんて気持ちで読み始めた。
下巻はまさに波乱万丈です。敗戦を機に、とにかく生きることだけに気持ちを注ぐ毎日。家族の死、飢え、貧困が次々と暗い話が続く。実家の農園を何とか立て直そうと頑張るスカーレット。全てを投げ打って、なりふり構わず次々と策を練っては実行に移す彼女の行動力は圧巻。
そんな時に現れるのがあの人。そう、レット・バトラーだ。二人の皮肉めいた会話のやり取りは相変わらずだけど、なんだかんだスカレートにとって頼れる存在は彼なのだ。
しかし、お金のために好きでもない相手と再婚したスカーレット。この結婚相手は、なんとスカーレットの妹の婚約者だったというのも驚き。なりふり構わず慌てて結婚しちゃうのは、もはやスカーレットのお家芸みたいだ。
今回の結婚で彼女は当時の女性としては異例である経営の職に就き、生きがいを感じる。だが、またも望んでいない妊娠、出産という流れでイライラするスカーレット。彼女は明らかに家庭向きな女性ではなく、仕事でお金儲けすることに生き甲斐を感じるタイプ。それゆえに世間の目はとても冷たい。
そうこうしているうちに2度目の旦那も死んでしまい、3度目の正直と言わんばかりに、ようやくバトラーと再再婚するに至る。おーー、やっとかぁ....。
(本文より)
彼と結婚することで、再び裕福な日々を迎えたスカーレット。ここぞとばかりに豪遊するふたりの様子。このままラストまで行くのかと思いきや、物語はまたも暗雲が立ち込めていく。
ここからはネタバレしたくないのでざっくりと。スカーレットとバトラーの間に子どもが生まれるのだけど、この子が生まれたことによってバトラーが本当に人が変わってしまうのです。
そんなんだから、スカーレットがこの期に及んでまだアシュレへ想いを寄せていることが判る。一途なのか、執着なのか、とにかく最後まで彼に対して想いを断ち切ることが出来なかったのが意外と言えば意外。
そして、私が一番注目していたのはアシュレイの妻・メラニー。最初はスカーレットのキャラがあまりに強すぎて注目すらしていなかったけど、下巻では、本当に強くて大人だったのはメラニーだったと気付く。こういう脇役がいたからこそ、スカーレットが引き立てられていたのだなぁと分かります。
とは言え、こんなにもいろんなことを背負っていたスカーレットもまだ20代と若い。彼女がこの先、どんな人生を歩むのかは、読者が好きに想像するしかないのだけど、もし、彼女が今を生きていたらきっと相当な起業家になっていたのではないかなあ~なんて思ったりもした。
「どこを開いても面白い」っていうようなことを確か林さん、おっしゃっていましたが、ホントにその通り。読み易いし、どのシーンを切り取っても映像が浮かんでくるような感じがした。
ということで、自分の思っていた物語と全然違った結末だった。なにせ、ものすごく情熱的な恋愛ものだと思っていたけど、それは、あの有名な映画のパンフレットの絵に大きく影響をされていたんからかなぁ。(☟これこれ)
最後に、物語はただ単にスカーレットの話を描いたものではない。戦争、女性の生き方、人種差別など、今を生きる私たちが抱えている問題がたくさん詰まっている。いま一度、これらを考えさせられた一冊でもあった。
文庫本の方はどうなっている?完結してるの?
文庫本が先に出ていて4巻までは確認出来ましたが、完結しているのか不明です。(2023.12現在)噂では5巻はまだで、今回出た下巻に続く...みたいな流れとか。中途半端ですよね。これから文庫の完結版が発売されるのか分からないので、今回の上下巻で最初から読むのがベストだと思います。先が気になったまま悶々とするのは避けたいですからね(笑)
合わせておすすめ
原作は5巻からなるのかな。これ、ハードルがちょっと高いのよね。林さんのを読んでから原作を読むのがいいかもね。
林真理子について
1954(昭和29)年、山梨県生れ。1982年エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が大ベストセラーになる。1986年「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞、1995(平成7)年『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞、1998年『みんなの秘密』で吉川英治文学賞、2013年『アスクレピオスの愛人』で島清恋愛文学賞、2020(令和2)年、菊池寛賞を受賞。そのほかの著書に『不機嫌な果実』『アッコちゃんの時代』『正妻 慶喜と美賀子』『我らがパラダイス』『西郷どん!』『愉楽にて』『綴る女 評伝・宮尾登美子』など多数。(新潮社・著者プロフィールより)