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【感想・あらすじ・レビュー】肌馬の系譜:山田詠美

 

 

肌馬の系譜:山田詠美著のレビューです。

☞読書ポイント 

山田詠美のこれまでの作品がギューっと詰まった短編集。とにかくバラエティーに富んでいる、いわばバラエティパック的なお得感!両親のことを綴った話は泣き笑いしたくなるようなあったかいエッセイ、必読です。

 

感想・あらすじ 

肌馬の系譜

肌馬の系譜

 

あーもう参っちゃうな。いろんな感情を呼び起こされ、時の流れを感じながらの読書でした。最後のエッセイで泣かされ、一息ついてから「あとがき」を読んだ。しかしこれも最後の一行まで泣かされた。これだからエイミーの書くものは気が抜けない。ケラケラ笑った先に、こらえ切れないほど感情を揺さぶられちゃう。参った、参った。

 

短編集と一言では括れない本当にバラエティーに富んだ作品群。読み終わるごとに、「どれだけ引出しがあるんだよ?」って言いたくなっちゃいました。山田詠美のこれまでの作品という皿を、次々と目の前に並べていくような....とにかく、それくらい「山田詠美」が詰まっている。

 

異文化とか、男女差別とか、もうずーっと前からエイミーは書き続けている。彼女なりの経験を踏まえ言葉にして来たわけだけど、今回とりわけ気になったのは「あとがき」に書いてあった最近の「ポリティカル・コレクト」について。エイミーにとってこれ、本当に窮屈そうだなぁと。言葉を扱う職業だからこそ余計に慎重にならなければいけない立場なんでしょうけど、「やだよ、そんなの」って言えるエイミーはやっぱり良い。

 

 

 

 

さて、今回特に良かったのものをふたつ紹介。

エイミーの本をずっと読んできた読者に必ず読んで欲しいのは、一番最後にある「時には父母のない子のように」です。お父様とお母様が立て続けに亡くなってしまったとのことで、追悼のようなエッセイなのですが、もうね、泣き笑いしながら読みました。

 

山田家の人々には、これまでのエッセイで何度も何度も楽しませてもらった一人です。だから、なんだか親戚のおじちゃんとおばちゃんが亡くなってしまったような寂しさが押し寄せちゃいまして。もちろん私たちが知らないご両親の一面を今回のエッセイで知ったりで、「あぁ、どこの家族も色々だなぁ」と感慨深い。

 

両親への尊敬の形っていうのもいろいろなんだって。「親を尊敬しています」って、胸を張って言えない人って結構多いと思う。わたしもそうだな。照れくさいって言うのもあるけど、尊敬ってちょっと違うかもって。

 

言葉でいうのは簡単だけど、そうじゃなく、深い部分で子が親に対して感じて来たことをエイミーは綴っている。彼女の言動から、どれだけ母親に敬意払って来たかが窺える。「尊敬」ではない、もっと、いとおしくて、哀しい、何かを。これがとてもしっくりくる。

 

 

 

って、この一編の感想だけでつらつら書きまくっていますが、短編小説も面白いです!懐かしいアメリカンな雰囲気のものもたっぷり登場。そんな中で新鮮だったのが「陰茎天国」。タイトルがアレなんですけど、いや、内容はタイトル以上に強烈でした。

 

 

冒頭3行からして、ものすごく興味が湧きませんか?陰茎たちは「ヘヴンさん」って呼ばれていて、娘たちは年頃になると妙に気になって来ると言う。

 

奇想天外な話なんだけど、ラストシーンはちょっと笑ってしいました。これ、ユーモアと捉えていいのかな?って自分でツッコミを入れましたが....。とにかく、その光景を頭の中に描くと、なーんか可笑しくて(笑)まぁ、ちょっとグロいけど、楽しんでしまいました。

 

ということで、今年は年始にエイミーの「私のことだま漂流記」に感動し、年末に本書でまたまたヤマダ文学にハマった.....という、幸せな読書時間が得られた1年となりました。(いや、まだ終わってないけど)。そろそろ長編も読みたいなぁ~という気持ちを念じています(笑)

山田詠美プロフィール

1959年、東京都生まれ。85年「ベッドタイムアイズ」で第22回文藝賞を受賞しデビュー。87年「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」で第97回直木賞、89年「風葬の教室」で第17回平林たい子文学賞、91年「トラッシュ」で第30回女流文学賞、96年「アニマル・ロジック」で第24回泉鏡花文学賞、2001年「A2Z」で第52回読売文学賞、05年「風味絶佳」で第41回谷崎潤一郎賞、12年「ジェントルマン」で第65回野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で第42回川端康成文学賞を受賞。他の著書に『ぼくは勉強ができない』『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』『血も涙もある』『私のことだま漂流記』などがある。(Amazonより)

 

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山田さんがどんな人で、これまでどんな作家生活をしてきたか等々、山田詠美の歴史を知るのに最高の一冊ですよ。ファンはもちろん、山田さんの作品が気に入った方はぜひ一読を。

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