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【感想・あらすじ・レビュー】東京百年物語3 一九四一~一九六七 (岩波文庫)

 

 

東京百年物語3 一九四一~一九六七 (岩波文庫)のレビューです。

☞読書ポイント 

あの文豪たちの短編集が一冊に。程よい量の短編なので、この本をきっかけに、お気に入りの作家との出会いも期待できます。一番気に入った作品はなにか?読後に思わず話したくなる感じも楽しい。

 

感想・あらすじ 

タイトル通り、1941年から1967年の東京が舞台のアンソロジー。シリーズもので3部作になっています。本作はその三部目。錚々たる作家たちが当時の様子を思い思いに描いています。ちなみその作家たちとは...

太宰治、壺井栄、稲垣足穂、上林暁、志賀直哉、梅崎春生、林芙美子、中野重治、安岡章太郎、森茉莉、三島由紀夫、山川方夫、内田百閒、遠藤周作、吉本隆明、吉行淳之介

豪華メンバーですよね。お気に入りの作家がちらほらと。

 

今回読めて良かったのは、ずっと気になっていた太宰治の「東京八景」。わたしは太宰の人物像など詳しくなく、これまでは見聞きしたイメージ像にとどまっていましたが、本作を読んでそのイメージが概ね間違ってなかったことの確認が出来た気がしました。にしても、太宰の命日である「桜桃忌」に本作を読んでいた、というか、なにか読まされた感があったなぁ。恐るべし、太宰。供養として、わたしがさくらんぼを食べよう(笑)。

 

 

 

 

16の作品の中で一番面白かったのは三島由紀夫の「橋づくし」。築地や銀座界隈にある7つの橋を渡り切るという願掛け。これに挑むは新橋の料亭の女性たち。料亭の娘、芸妓、新米女中というメンバー。各々、胸に秘めた願いを持って、8月15日の満月の夜にこの橋を全て渡る、しかも、途中で口をきいてはいけない、後戻りもしてはいけないというルールに乗っ取ってスタートするのだが.....。

 

案の定、様々なトラブルが起きるのだが、そのスリリングな感じがなんとも巧いんですよねぇ。そして、この界隈の橋の数々は、ちょっとした東京観光のようでもあり、この本のタイトルにふさわしい内容でもあった。

 

さてさて女性たち。脱落者は出て来るのか?最後まで渡り切れた人はいるのか?結末は、ニヤッとしちゃうものがあった。やぁ~三島さん、こういう短編の匙加減が本当巧いなぁと、改めて思いました。

 

他にも安岡章太郎の「ジングルベル」、林芙美子の「下町(ダウンタウン)」、内田百閒の「アジンコート」などは安定した面白さ。好きな作家たちの未読の短編はまだまだたくさんあるものだなぁと、読書意欲を掻き立てられました。こういうアンソロジーはいいですねぇ。一部、二部も機会があれば読んでみたいと思う。

 

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興味のある年代から読むことをおすすめします。