一九六一東京ハウス :真梨幸子著のレビューです。
☞読書ポイント
高額賞金がもらえるリアリティショーの番組に参加した家族。しかしこの番組は単なる娯楽ではなかった。やがて殺人事件が起こるのだが、その事件は昔起きた事件と酷似。一体、この番組にはどんな企みがあったのか?読めば読むほど謎だらけ....という世界に巻き込まれる。
気軽に申し込んだリアリティショーに参加した家族の行方は....
とても不思議な小説で、どこに、誰に焦点を当てて読めばよいのか最後まで迷いに迷って読了したといった感じだ。特に中盤から昔と今の話がごちゃごちゃと絡み合ってくるものだから、今と昔、どっちの話なのかさらに混乱。著者的にはここからが本番と言った感じでエンジン全開になるのだけど、読者としては戸惑いが増すばかり。最後まで辿り着けるのか不安になりつつ読み進める。
テレビのリアリティショーということで、2組の家族の生活を追う番組がスタートする。3か月、やり切ったら多額な賞金がもらえるということで気軽に応募した家族。番組の内容は「昭和の生活を再現」ということで、用意された団地で生活をすることに。リアリティ番組なので、部屋には監視カメラが取り付けられる。家族はある意味、演じた生活になるのだが...。
最初は昔の不便な部分と今を比較したりする感じで読んでいて楽しかったのだけど、やがて人間関係の歪みなどが出てきて雲行きが怪しくなってくる。というのもこの2組の家族、最初から意図的に格差をつけられていて、同じ団地生活でも中身はかなりの差があったのだ。
番組を作る側の悶着、出演している家族のトラブルがどんどんヘビーなものになり、やがて殺人事件が発生する。この事件が、昔、本当に起きた事件とそっくりなものだったから、さらに複雑な展開になる。昔を掘り起こして話が進んでいくものだから、このあたりで少々うんざり感が。でも、「そうだそうだ、真梨さんの作品ってこんな感じだったなぁ」と、これまたちょっと懐かしさも出てきて一気に最後まで。
最終的にはこの番組の意図は?誰がなんのためにこのような番組を企てたのか?そこが知りたくてラストへ向かう。
ということで、イヤな感じは相変わらずだったなぁ(笑)個人的には殺人なんてなくても、この2組の家族の行方はいろんな方向に話が持っていけたんじゃないかなと、ちょっと残念。前半の雰囲気のまま話が進んだらもっと面白かったのになぁ。
ということで、昭和生活の話は楽しかったけど、後半は二転三転で結構忙しかった。どこからが演出で、どこからがリアルなのか?それすらも曖昧な時間があって、居心地が本当に悪かった。読み終えてなぜかホッとした。ん~~、手ごわい一冊でありました。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
*海外のイヤミス
海外文学のイヤミスと言えば、「その女アレックス」でブレイクしたピエール・ルメートル。人殺しに容赦ない感じが辛い。