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【感想・あらすじ・レビュー】女二人のニューギニア:有吉佐和子

 

 

女二人のニューギニア:有吉佐和子著のレビューです。

 

☞読書ポイント 

有吉佐和子さんの小説とはひと味違った世界が覗ける旅エッセイ。とは言え、旅と言うより探検、サバイバルという言葉が浮かぶほどハードものになっている。文化人類学者の畑中幸子さんの会話から窺る有吉さんのいつもとちょっと違った姿が見られる貴重な一冊。

 

感想・あらすじ 女二人のニューギニア:有吉佐和子

 

表紙のイラストを見ると、のどかな旅を想像しますが、これと実際の旅のギャップは相当なもの。

 

私がニューギニアへ行くと言いだしたとき、そんな無謀なことはよせ、お前には無理だと言って止めてくれるひとが、一人もいなかったのは何故だったのだろう。

 

本作の冒頭から、有吉さんはこうぼさいている。一体これから始まる旅に、なんでこんなことを言っているのか?楽しくなかったのか?と、表紙ののんびりムードは一掃されてしまった。たぶん、有吉さんのニューギニア行きを周りの人が止めなかったは、彼の地がどんなところかみんな知らなかったのだろう。かく言うわたしも、ニューギニアについて、漠然としたイメージは湧くけど、旅行として行くとなると全くノーアイディアと言った感じです。時代は令和になり、情報も容易に手に入ると言うのに。

 

 

 

 

時は1968年、とにかく出発時から危うさが漂うこの旅。待ち合わせだって今みたいに携帯やネットがない時代。ニューギニアに住む文化人類学者の友人・畑中幸子さんが迎えに来てくれるわけだが、会えるかどうか分からないという不安なスタートなのだ。

 

畑中さんの住まいに行くにはセスナで移動し、そこから3日間山を歩くというニューギニアの奥地、ヨリアビ。もうね、この山道を3日間という苦行とも言える移動が壮絶すぎる。旅ムードとはとても言えないハラハラの連続。冒頭の「止めてくれる人が何故いなかったのか?」という疑問を読者も反芻することになるほど。最終的に有吉さんは、運ばれる状態で到着するのだけど、とにかく第一の山場は超える。

 

そこからシシリア族が住む場所で、畑中さんとの生活がスタートするわけだが、衣食住、全てにおいてとにかくハードな生活を強いられる。畑中さんはたった一人でこの生活をしているということにも驚くばかりだが、彼女の強烈なキャラクターにも釘付けであった。有吉さんと彼女のやり取りは、時に辛辣であったり、でも、最終的には大笑いしてしまうユーモアさを持っていたりと、二人の関係性も見ごたえがある。

 

なにもすることがない有吉さんが、ひたすらパンツを縫う作業に専念していたのも印象的。裸で暮らす民族に続々と有吉さんのパンツを履く人々が増えていく様子を想像するとちょっと笑ってしまう。

 

常に頭のなかをよぎるのは、帰りもまたあの山道を戻らなければならないという憂鬱。有吉さんだけでなく、読者もそのことを読みながら考えることになる。日本には母親と幼い娘を残して出て来た有吉さん。長居してもいられない。足の回復を見て帰国を考えているわけだが、あの山道.....。

 

しかし、奇跡的なことが待っていた。それは読んでのお楽しみにしておきますが、帰国してからの有吉さん、これがまた大変なことが起きてしまうのです。いやぁ、、ホントに大変な旅になったものです。

 

 

 

 

本書は有吉さんのニューギニア旅の話と同時に、畑中さんのお仕事についても知ることが出来る。文化人類学者とは、こんなにもハードな研究なんだということが窺える。

 

とにもかくにも、無事に戻って来られた有吉さん。冒頭にあった「お前には無理だと言って止めてくれるひとが、一人もいなかったのは何故だったのだろう。」―ほんと、それ。今も天国で有吉さんはブツブツ言っているに違いない。

 

 

・有吉佐和子プロフィール

(1931-1984)和歌山生れ。東京女子大短大卒。1956(昭和31)年「地唄」が芥川賞候補となり文壇に登場。代表作に、紀州を舞台にした年代記『紀ノ川』『有田川』『日高川』の三部作、一外科医のために献身する嫁姑の葛藤を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、老年問題の先鞭をつけた『恍惚の人』、公害問題を取り上げて世評を博した『複合汚染』など。理知的な視点と旺盛な好奇心で多彩な小説世界を開花させた。(新潮社・著者プロフィールより)

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畑中さんもやっぱり本を書かれていました。畑中さんの仕事やニューギニアのことが気になったら、こちらを読むといいかもね。発売が2013年なので、意外にもつい最近に書かれたものなんですね。有吉さんも読みたかっただろうな。