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うずまきぐ~るぐる 

*** 読書書評ブログ ***

【レビュー】朱より赤く:窪美澄

 

朱より赤く:高岡智照尼の生涯:窪美澄著のレビューです。

 

 

☞読書ポイント 

いつもの窪美澄作品と一味違う作品。高岡智照という女性の波乱万丈の人生を描く。12歳で父親に大阪のお茶屋に売られた少女。男女間のいざこざで小指を切り落したスキャンダルでも有名。様々な場所で様々な経験をしながら最終的には仏門に入る。高岡智照について知ることが出来る1冊。

 

「綺麗な着物を着せたる」からはじまる波乱万丈

 

いつもの窪作品から大きく路線が変わったという印象の本作。これは窪さんのチャレンジなのかな?どうしてこの女性について書いたのか?そのことについても興味が湧くが、とりあえず何も考えずに読み始めた。

 

高岡智照(たかおか ちしょう)という女性をご存じだろうか?おそらく現在彼女のことを知っている方はそう多くはないだろう。明治29年生まれ、早くに母親が亡くなり、12歳で「綺麗な着物を着せたる」という父親の甘い言葉に乗せられ、大阪のお茶屋に売られてしまったという。12歳って....。冒頭から不幸な空気が漂ってくる。

 

それでも周りの人々を見よう見まねで大人の世界に染まっていく少女。舞子、芸妓とステップアップしていく中で、男女の悶着もたびたび起こるわけだが、彼女はあるいざこざで自分の小指を自ら切り落とすという行動に出る。このあたりの勢いと言うか、ハチャメチャな行動がのちに世間で話題なるのだが。

 

 

大阪や東京を行ったり来たりしながら、その後、結婚してアメリカに渡る。そもそも夫になる男のことより、アメリカに行けるということに胸をときめかしていたという安易な気持ち、加えて夫の女遊びにより、案の定、夫婦関係は悪化。そんな彼女は気の合う女性と恋に落ち、同性愛に走る。ようやく身も心も満たされる恋愛を経験し、アメリカであらたな夢を見い出すも、結局は夫と日本に戻り、今度は女優デビューを果たす。その後、離婚し、ものを書いたりもするのだが、最終的には仏門に入るというところに行き着く。

 

とにかく短期間にぎゅうぎゅうにいろんなことが詰め込まれた人生だ。仏門入りも38歳と言う若さなんですよね。社会人となったのが12歳だから、スタートが早い分、38歳で仏門入りもなくはないのだろうけど、それにしてもいろんな意味で猛スピードだ。このように短期間に一気に駆け抜ける人生という話は多いけど、智照尼に関しては94歳くらいまで存命だったそうなので、人生の大半は尼として生きたことになる。この本に書かれなかった人生後半部分をどう生きたのかも興味深い。

 

美人ゆえに方々からお声がかかり、そのたびに裏切りやいじめに遭ったりと苦労も絶えない。反面、救いの手も多く、いろいろなことを経験し、与えられた場所でそれなりに役目をこなす彼女ではあるのだけれども、どこか地に足がついてないようなふわふわした生き方に見える。それもこれも自ら選んで決めた道ではなかったからだろうか。そんな中、彼女が意地を見せた指を切るシーンは、この作品の中で最も生々しく、唯一彼女の「芯」みたいなものを感じた瞬間だった。

 

さて、窪さんが何故この小説を書いたのか?「智照尼の人生を描いてみませんか。」と、担当編集者さんからの誘いがあったとのこと。資料を軽く読み、ご自身も小指を切る夢をみたとかで、「これは逃げられない」と感じたそう。こういうことがきっかけになるってこともあるんですね。

 

私的には高岡智照という女性のことが知れて良かったとは思うが、波乱万丈な人生、もう少しこってり描いて欲しかったかな。読み易さを優先するならこのくらいがベストだとは思いますが。

 

高岡智照に関しては、瀬戸内寂聴さんも「女徳」というタイトルで書いているそうですね。自身も仏門に入った寂聴さんが描く智照尼も興味があります。読み比べてみたいと思います。

 

【つなぐ本】本は本をつれて来る

*大阪のキャバレーが舞台

こちらの舞台は大阪のキャバレー「グランドシャドー」

華やかな世界とは裏腹に、彼女たちの生活はつつましやかで

何とも哀しい物語があった。

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