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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】手毬:瀬戸内寂聴

 

 

手毬:瀬戸内寂聴著のレビューです。

手毬 (新潮文庫)

手毬 (新潮文庫)

 

 

 こんなにも人を想い、慕い、憧れる存在が居るということは本当に幸せ

 

(少しだけネタバレがありますのでご注意ください)

 

「燃え上がるような」「激しい」など、寂聴さんの小説はこちらが疲弊するほどのものが多いのですが、今回は意外にもサラッとした印象。逆にいつ燃え上がるのだろう?と勝手に先走っていた自分が少々恥ずかしい(笑)

 

本書は晩年の良寛と、貞心尼との師弟愛を描いている。貞心尼は17歳で医者に嫁いだのだが、夫の急死で離縁され、その後、24歳で出家した。30歳の時に70歳の良寛と出会う。そこからは寝ても覚めても良寛様一色の貞心尼。

 

人生のなかで、こんなにも人を想い、慕い、憧れる存在が居るということは本当に幸せなんだろうなぁと思わされる貞心尼。彼女をそこまで思わせた良寛様とは一体どんな人物だったのか?

 

無邪気な子どものような姿を見せたかた思ったら、懐の深い安らぎを与えてくれる大きな存在感を見せたり。そんな様々な顔を持つ良寛様の生い立ち等も徐々に明かされていく。

 

 

 

そして本書にもうひと色添えてくれている人物がいる。貞心尼の元へやって来るいなせな行商・佐吉。貞心尼と佐吉の男女の仲はゆらゆらしている感じで、こちらも最後までどうなるか気になってしまう。

 

個人的には気持ちを残したまま、貞心尼に知らないうちに亡くなってしまった佐吉の気持ちいじらしく、切なくて...。

 

そうそう、良寛様と貞心尼のことは、かなりのページにわたり和歌を通してのやり取りがされています。和歌の解釈がいまいちの私にとって、少々ここは難易度が高かったですが、まぁ、それを抜きにしても、充分この小説は楽しめました。

 

ということで「手毬」はとても清らかな作品。象徴ともいえる貞心尼の手作りの手毬の鈴の音が、どこからか聞こえて来るような余韻を残す小説でした。