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うずまきぐ~るぐる 

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【レビュー】赤ちゃんをわが子として育てる方求む:石井光太

 

 赤ちゃんをわが子として育てる方求む:石井光太著のレビューです。

 

「特別養子縁組制度」の歴史にはある男の強い思いから成り立っていた

 

何かの制度をつくるときのきっかけは何であったのか?今では当たり前のように使われている制度にも、歴史を遡ってみると驚きの経緯があることに気づかされる。本書は、今ではよく耳にする「特別養子縁組制度」を、強い意志を持って勝ち取った一人の医師の話を綴ったもの。

 

1926年石巻で生まれた菊田昇は、母が経営する遊郭で育った。小さいころから遊郭で働く女性たちに囲まれて育った菊田は、女性たちの大人の悲しい世界を早い段階から感じ取っていた。そのひとつは妊娠、堕胎に関することだ。このことが少年の心にはいつまでも残っていた。

 

やがて医学部を卒業した彼は産婦人科の医師になり経験を積んでいくのだが、中絶に関する不条理など様々な苦悩を味わう。例えば、早産で生まれた赤ん坊を自らの手で殺して「早産」と処理したり、八か月、九か月の赤ん坊の中絶が横行している等々、菊田医師はこれらの問題をなんとかしたいと考え始める。

 

 

 

開業医となった菊田は、妊娠した女性が子供を堕ろさず生むことによって子供を望んでいる夫婦のもとへ.....という橋渡しができる制度を作ろうと試みる。これが現在の「特別養子縁組制度」だ。この法整備を目指すには、国や医師団などと闘わなければならない様々な問題が待ち構えていた。

 

その紆余曲折が本書には事細かく描かれているのだけど、とにかく菊田医師の圧倒的な思いと信念の強さに心が震えます。また、その信念を支え、ともに歩む看護師や奥様の強さも。

 

菊田医師は最終的に「特別養子縁組」の制度を自らの手で勝ち取ったわけだが、何もないところから何かを作り出すということは、こんなにも大変なことなのかと改めて考えさせられた。精神的にもやられるし、根気強く取り組んでいかなければならないし。そして、菊田医師の産婦人科医として働きぶりも、ものすごいものがあった。

 

菊田医師の生涯かけての取り組みの原動力は、すべて「遊郭」の哀しい女性たちの姿だったのだろう。彼が遊郭で育たなかったら、おそらくここまでの情熱は生まれなかったと思う。

 

本書は小説ではあるけれど、菊田昇氏は実存していた医師。赤ちゃんの命を守るためにガムシャラに生きた。たまにニュースなどで聞こえてくる「特別養子縁組」という言葉。この制度がいかに大変な段階を経て今に至ったのか。ものごとの始まりを知ることの大切さも感じた一冊です。

 

それにしても石井さんが取り上げるものは、本当にいろいろと勉強になります。今回も忘れられない内容になったなぁ。これからも、わたしたちの知らない世界をどんどん見せてください。