NHKの「ひるまえほっと」内で、女優・作家である中江有里さんが紹介した本を掲載。番組内で話されていた内容を、ざっくりですが文字に起こし、お伝えします。
番組コーナー紹介文
月に一度のブックレビューです。案内人は女優で作家の中江有里さん。年間300冊の本を読む中江さんが、幅広いジャンルからご紹介。あなたも夢中になれる1冊に出会えますよ!
今回のテーマは、です深掘りです。
あなたにオススメの:本谷有紀子
中江さん:
近未来を舞台にした小説。そのなかの一編は、有名保育園にこどもを入れた母親二人が主人公。子育ては世代によっても考え方は随分違うんですけど、現代はネット情報によって同世代でも考え方が違う。それがさらに先へいくとどうなっていくかって、非常に読みどころがあるおもしろい本。ある意味のディストピアなんですけど、非常に考えさせられるものがある。
一日一考日本の政治:原武史
中江さん:
たまたま開いた1ページを読んでも面白いですし、冒頭から読むと365日、1年間読み続けられる。(エッセイなど)一場面から多角的に秀逸に解説されてくると、社会的なこととかいろんなことが見えてくる。また、政治家とか、思想家とかの専門的な言葉も取り上げている。そういうところの言葉の裏側にあるものを教えてくれる。わかりやすいフレーズというよりどちらかというと、しっかりした文節で取り上げているってことで、読みごたえを感じます。
心はどこへ消えた?:東畑開人
中江さん:
臨書心理士の著者による心をえがくエッセイ。その中に「まったく見通しが立たない、私たちは今、そういう世界を生きている」という一節がある。これはコロナ禍の現状を指している言葉なんですが、実は私たちは、その前からそうだったような気がしてきた。つまり、自然災害とか格差とか先の見えない中に常にいて、そういうことにさらされている過酷な状況のなかで生きている人の声を拾いながら、目に見えない心を捉えようとする一冊。患者さんの悩みは非常に深刻なものもあるんですけど、文章は非常に軽妙で読みやすい。読みながら「私の心って」と、自分の心を覗くようなそんな感覚がありました。
地中の星:門井慶喜
中江さん:
私は大阪の出身で、東京に出てきたときに東京の地下鉄が張り巡らされていてすごく驚いた。なかでも銀座線が一番古いって聞いてたんですけど、その銀座線がどうやって生まれたかっていうことが、この中に込められている。実際どうやって地下鉄が作られたかはあまり知られてないんじゃないかな。前代未聞のことで、どんな困難があったか、これを読むとひしひしと感じられます。
お金も大事だけど、人がどうつながっていくかっていうのが非常に読みどころ。前代未聞のことをするときは、応援より反発が大きい。それをどう乗り越えていくか。それはどんどん味方を作っていくってことなんでしょうけど...。この小説は地下鉄がどう作られたかということと同時に、そこにかかわった人間を描いている。
yuri’spoint
本当の「地中の星」は?
中江さんは工事に関わった職人たちかなと。
すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険:山本健人
中江さん:
自分のからだってよくできているって知ってたけど、でもうまく言えない。それがすごくわかる。
指の先を紙でちょっと切っただけでもすごく痛いじゃないですか。それが手術になるとお腹切ったりしてメスを入れても全身麻酔をすることによって痛みを感じず患者は過ごせるわけなんですよね。すごい技術なんですよね。そういったことも、生まれるまでが大変なことなんですよね。
今、私たちが当たり前のように思っていること、例えば医師のガウンが水色って場合がありますよね。あれは目の疲れを軽減させるかれっていうちゃんと意味がある。当たり前を見過ごしていると本当の意味を失うこともあって、そういうこともこの本を読んで再確認しました。
yuri’spoint
あなたの体をめぐる知的冒険
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<感想>
「すばらしい人体」の紹介で、軽く人体実験をしたのですが面白かったです。ちょっとしたことだけど、人間の体って本当に不思議です。自分の体だけど知らない部分が本当にたくさんありそうです。
本日は、「自分がいま何を深掘りしたいか、考えるきっかけになる本」と中江さん。何を深掘りするか、それ探すのもまた楽しそう。それではまた来月!
【過去のブックレビュー】