花は散っても:坂井希久子著のレビューです。
わたくしの正義といえば、姉さまをお守りすること
谷中で着物のネットショップを営んでいる美佐。実家の蔵を整理しに帰ったときに祖母が遺したものを見つけ、東京に持ち帰ることになった。
夫と上手くいっていない美佐は、夫婦の家には帰らず谷中で生活をしている。そこで一人静かに祖母の遺したノートを読み進めて行くことに。
日記は義理姉妹の咲子と龍子の日々の暮らしが綴られていた。祖母の咲子は龍子を慕い、常に龍子と行動を共にしていた。彼女たちの生活は「少女の友」から抜け出したような世界。女学生たちにとってのエスの存在、想い慕う一途な彼女たちの姿は、まさに少女小説そのもの。吉屋信子さんをはじめとする少女小説ファンにとっては、大変楽しめる内容になっている。
学校を卒業すると龍子は結婚。やがて彼女たちは戦争に巻き込まれ家を失う。落ち着くまで軽井沢に移って生活をすることにした咲子と龍子。二人だけの生活に心を躍らせた咲子であったが....。
このあたりから話がちょっとダークなものになって行き、なかなか目が離せない展開へ。彼女たちの大胆な行動は驚きの連続でドキドキハラハラ。果たしてふたりの計画はうまく行くのだろうか?
戦争が終わり、二人は別々の生活へと戻って行くのだけれど、うーん、龍子の様子がなんだかスッキリせず、二人の関係も切ないなあ...。
今を生きる美佐と、祖母たちの生きた時代を行ったり来たりしながら進行する物語。祖母の残したノートや写真の謎に迫るちょっとした謎解きの要素もあり、最後まで目が離せません。全体的には祖母たちの時代の話が中心です。
また、夫との関係にどうけじめをつけるか、美佐のことも気になるところですが、彼女の良き友である関君の存在が心強い。
ということで、あらすじ等、ネタバレ回避のためかなり割愛しましたが、少女小説好きなので、この時代の女学生の暮らしぶりや、優雅な感じにどっぷり浸れました。また、アンティーク着物や骨董など、レトロな雰囲気がたっぷりめなので、最後まで楽しませてもらいました。
坂井さんは初読みです。Wikipediaには、小説家・官能小説家とあるんですが、いろんなジャンルの作品が書ける作家さんなんですね。作品もかなりたくさんあるので、追々、読んで行きたいと思います。美味しそうなタイトルが多い(笑)