青いノート・少年:吉屋信子著ののレビューです。
当時の少女たちの生活が短期間で激変する様子が描かれる
「からたちの花」に続く、吉屋信子少女小説集2冊目です。吉屋さんの少女小説はどの作品も少女たちの生活の中に「明」と「暗」がいつも絶妙な配分で盛り込まれている。
悲しい場面もサラリと描かれ、あくまでもラストは爽やかな読後感が約束されているので、私的には安心していつも読んでいます。
本書の2編も吉屋さんが生きていた時代の少女たちの生活ぶりや心の葛藤がよく描かれる。
「青いノート」では、父が公職追放で屋敷と家財道具を手放さなければならなくなり、近くの小さい家に女中を連れて引っ越した少女の一家の話。自分たちが住んでいた屋敷には新しい家族が越してきて、ご近所付き合いを始めるのだか・・・。
また北京から引き揚げて来た級友の日本での暮らしぶり等々、当時の少女たちの生活が短期間で激変してゆく様が伺える。
自分の愛着のある屋敷を横目にしながら生活する切なさ。特に自分のお雛様が他人のものになるなんて。なんと惨いことか。
表題の「青いノート」とは軍医で戦死した兄の遺品であるノート。形見であるノートに少女は成長してゆく自分の心の足あとを一歩一歩書き記している。
次の「少年」の面白さは家族関係の結びつきにある。両親が離婚し、祖父母と母親と暮らしていた少女。母はやがて東京の旅館を経営する子持ちの男性と再婚する。
少女は祖父母と暮らすことを選び、そしてある日、母の元を去った父親が息子を連れて少女の家へ来訪。しかし、少女はその姿を見ずに再び別れたが、縁あって異母姉弟である三吉と出合い、彼を可愛がるようになる。
母の新しい息子と、母親との関係に嫉妬心が芽生えたり、その息子と三吉の境遇の違いなど、複雑な彼女の心境が見え隠れする。
ラストへ向かうほどどんどん話は展開してゆき、少女に切ない別れが訪れる。とてもあっけなく、涙が出る間もなくといった感じでしたが、このことから少女が飛躍的に成長してゆく姿が伺える。ストーリー的には単純なものですが、各々の立場や気持ちを掬い取ってゆくような面白さがありました。
あくまでも粗筋というか、登場人物の紹介程度になりましたが、細かい細かい人々の心情、家族観や、当時の風景等々、読まなきゃ感じられない部分がかなりあると思います。
特に人と人との心の通わせ方ややり取りは今の私たちの忙しいものとは違いちょっとホッとするような感覚を与えてくれます。
とにもかくにも当時の空気感を少女たちの目を通して知るのには、吉屋さんの文学がお薦めです。
さて、3巻目の情報はまだですが、是非このシリーズは続けていただきたいものです。





