路上のX:桐野夏生著のレビューです。
☞読書ポイント
青少年が居場所を失うということはどういうことなのか?
ネット上で知らない人の家に泊めてもらう少女の話を耳にすることがある。普通に生活していると「なんでそんな危険なことをするのだろう?」と思ってしまうわけだけど、本書を読んでいると、そこに行き着くまでの過程は、悪い意味で自然に流れ着く行動なのかもしれないと感じる。
やはや、本当にこういうことが現実に起こっているのだとすれば、若さ弾ける女子高生たちの姿も、ひょっとしたらそれは仮の姿であるかもしれない。
本書は大人たちの身勝手さから居場所を失った女子高生の話で、虐待、DV、レイプ、ネグレクト、JKビジネス等々、現代社会の問題が次々と登場し、非常に重苦しい内容である。
住む場所を失った女子高生が同じような境遇の仲間と出合い、なけなしのお金でなんとかその日を凌いで生きてゆく。お金を稼ぐために何をするのか、部屋が借りられない彼女たち、寝る場所はどう工面するのか。
大人の身勝手さから路頭に迷った彼女たちは、大人の男たちのビジネスの餌食になってしまう。犯罪にまで手を染めかけた少女たちの胸の裡を、私たちはどこまで受け止めることができるか・・・・。
小説といくら割り切って読んでいても「JKビジネス」など、実存する言葉を目にすると、一気に現実味を帯びてくるところにこの小説の凄みを感じる。
同著の「バラカ」も、少女たちの置かれている不安定さ、そして切羽つまった感じが
たっぷりと描かれていて、読んでいるときは夢中でしたが、読み終わると結構疲弊している自分がいた。この作品も同じ。
地下で蠢いている何かをいつも感じさせられる桐野作品。
ちょっとずつ初期作品にまた戻ってきているようにも感じました。
【つなぐ本】本は本をつれて来る