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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー・あらすじ・感想】インドラネット:桐野夏生

 

 

インドラネット:桐野夏生著のレビューです。

 

感想・あらすじ 結末は天国か、地獄か?終わらない旅のはじまり

ネタバレしないように書いていますが、ラストの雰囲気は綴っていますので、知りたくない方は「後半は~」の部分は読み飛ばして下さいね。

 

なんだろ、変な旅に巻き込まれちゃったなー、、、なんて気分になる不気味満載の小説でありました。

 

舞台はカンボジア。主人公は20代半ばの青年・八目晃。

八目はもうなんというか、コンプレックスが多く、会社でも顰蹙を買いまくるような男。生活も冴えなく、ゲームばかりしている。そんな彼が高校の同級生の父親の葬儀に出かけることから話が始まる。

 

カリスマ性を持つ野々宮空知と美貌の姉妹。空知は何のとりえもない八目となぜか仲良くしていた。八目は当時、彼の家にしょっちゅう遊びに行っていたので、姉妹や両親とも仲が良かった。

 

空知の父の訃報を聞き、八目は現在音不通となっている空知に会えるのではないかと葬儀に出かけるも、空知及び姉妹の姿はそこにはなく、ある人物から空知たちの捜索を依頼されることに。

 

会社で問題を起こしたばかりの八目はこの機会に会社を辞め、しばらく空知を探そうとお金を受け取りカンボジアに向かうことにした。

 

 

 

物語は空知と姉妹を探し出すことを目標に進んでいくのだが、八目のダメっぷりからくるトラブルに終始ハラハラ、イライラさせられる。初めての海外がカンボジア、ろくに下調べもなく出かけた彼に「そもそも大丈夫なのか?」となるのだが、その悪い予感は的中、旅の最初からトラブルが勃発する。

 

とにかく頼りなく、隙だらけの八目。お金を盗まれたり、パスポートを奪われたり、騙されたり、怪しい場所へ行かされたり。八目の周りがどんどんダークな色に染まっていく感じがなんとも鬱々とした気分にさせられる。しかし、姉妹の行方、空知の安否などが気になって気になって、結局、読者も共にに闇の世界に吞み込まれていく。

 

後半は誰を信じていいのかするらも分からなくなっていく。そして八目の命もどうなるか。ラストは思わぬ展開で、「え?なに、なに?この展開」って思っているうちに、一気に終了。わーん、すごい斬新な終わり方、あっけに取られてページをめくり終わると、真っ黒の背表紙が現れた。もうほんと、PCの強制終了されたような気分です。

 

たとえ悲しい結末でも、八目が少しは逞しくなり、なにかしらこの旅で得るものがあるという展開を期待していたけど....とんでもなっかた。桐野作品ですものね、もっと深い闇へ突き落されちゃうんだな。

 

最近ちょっと作風が変わりつつあるのかな?なんて思ったけど、読み終わると残るものは混沌とした世界。そういう意味でもやはり変わっていないなぁと思いました。

 

八目はともかく、自分はなんとか物語から抜け出し生還した。今はその安堵感だけで十分という気分です。