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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】人間水域:松本清張

 

 

 人間水域:松本清張著のレビューです。

人間水域 (祥伝社文庫)

人間水域 (祥伝社文庫)

  • 作者:松本清張
  • 発売日: 2020/01/10
  • メディア: 文庫
 

 

 

蠢いている、蠢いている

 

やはや、松本清張の作品の「蠢めき」はなんともいえない魅力があるなぁと、改めて思う。そして、登場人物たちのこれからの物語の方がむしろ気になるようなラストのシーンの巧みさ。上手いなぁ、久々にこういったラストの爽快感を味わった気がします。終わったようで、はじまりのような....。物語の人々は眠りません。

 

さて、何が蠢いているかって、まさに様々な立場の人間たちの駆け引きがものすごい勢いで展開されている。外見は涼しい顔をしているものの、心の中では常に計算してたり、自分の地位を維持することに必死。水鳥の水面下の足を想像させられるような人々。

 

前衛水墨家として一躍脚光を浴びた久井ふみ子。ライバルの滝村可寿子。そして、旧大名家の名士で美術界のドンである市沢庸亮。パチンコ店で財をなした長村平太郎。

 

ともに美しいふみ子と可寿子。芸術家として生き残るためには経済的な安定がなによりも大事だという世界。ということで、彼女たちにはパトロンの存在が居るわけだが、そこでの駆け引きは本当にゾクゾクするものがある。そんな世界を冷ややかな目で見ている新聞の学芸記者の島村。

 

 

 

やがて、色恋沙汰から恐ろしい障害事件が起きてしまう。それを隠そうとするふみ子の両親の思惑もまたなんだかびっくりしてしまうのだが、とにかくみんながみんな、自分を一番に考えているところがそれはもう.....。

 

財力を振りかざす男性たち。誰に付けば自分が有利か常に計算している女たち。利用し、利用され、そんな世界に、目が離せず、みるみるうちに巻き込まれてしまいました。

 

解説に書かれていたのですが、松本清張は美術を中心とした芸術の世界を背景にした作品が多いと言う。この先、これらを中心に読んでみたいなぁと思った次第です。やぁー面白かった!