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【レビュー】バラカ:桐野夏生

 

 

バラカ:桐野夏生著のレビューです。

バラカ

バラカ

 

 

 

 

◆どこか異国の雰囲気を纏うというこれまでとひと味違った震災風景

 

 

ふぅー、長く重々しい小説であった。
具だくさんな内容であったが、なんだろう、ラストはあっけない。エピローグの畳み込むようなまとめにどっと疲れが・・・。長丁場の終わり、もうちょっと丁寧にしてほしかったと思うのは望みすぎなのかな。

 

それはさておき、かなりのボリュームです。
震災を中心に赤ちゃんが売られているというドバイの市場、酒、暴力、家族、原発、ジェンダー等々、あらゆる問題を盛り込みながら話が膨らんでゆく。にもかかわらず、話が散らかることなく読み易かったのは、全ての話の軸に「バラカ」という一人の女の子の存在があったからだろう。

 

バラカは日系ブラジル人夫婦の元に生まれたが、両親の事情によりドバイの市場で売られてしまった。そこへ買いに来たのが、子供を欲しがっていた日本人の独身女性。バラカはその女性の子供になる。母親となった女性はやがて一人の男と結婚し妊娠。なかなか懐かないバラカのことを次第に鬱陶しく思うようになる。やがて母親は夫の転勤先で震災に遭い帰らぬ人となる。

 

バラカは当時母親の友人に預けられていたので、震災で命を落とすことはなかったのだが、意外な場所でお爺さんたちに発見されることになる。そこからバラカは逃走するような人生が始まるわけだが・・・・。

 

親の愛情を知らずに育つバラカ。人を信用するということがとても難しい環境。
殺伐とした環境の中、ポツリポツリと人の温かみを感じる場面に出会う。そんな日の当たる場所をバラカも我々読者も終始追い求める。

 

震災を描いた小説は数多く出版されてきたが、桐野さんの描く震災小説は日系人などを登場させたことにより、どこか異国の雰囲気を纏っているというひと味違った震災風景に見えた。

 

原発事故にともない荒れてしまった地域などの風景は現実的なものだけれども、そこで起きている出来事がどこか非現実的な感じがある。現実と非現実が混じり合うドロドロとした感覚が、妙に重たく救いようのない場所として映る。

 

そして桐野作品特有の追われている感、駆け抜けていく感がどこか懐かしくもあり不安をあおられるものでもあった。

 

ちょうど震災7年目を迎える日にこの本を読んでいた。決して忘れてはならない被災地の現状よりオリンピックに目が行ってしまった日本など、心当たりのある言葉が数多く登場した。ずっと予約で埋まっていた本書がここにきて手元に届いたのもなにかの思召しかしら?と感じてしまった。

 

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