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【レビュー】灯台からの響き: 宮本輝

 

 灯台からの響き: 宮本輝著のレビューです。

灯台からの響き

灯台からの響き

  • 作者:宮本 輝
  • 発売日: 2020/09/04
  • メディア: 単行本
 

 

身近な人にも知られていない過去が、貴方にはありますか?

 

長年連れ添った夫婦であれど、互いの過去について必ずしも知っているとは限らない。本書はすでにこの世を去った妻の過去の秘密を、夫が辿っていくという物語。

 

筋はそれほど起伏があるというものではないのだけれども、そこは宮本さん、何気にミステリだし、何と言ってもしっかり頭に思い描けるような登場人物の面々。彼ら、彼女たちの人格が、徐々に滲み出てくるような深みのある流れにいつも吸い込まれてしまいます。

 

今回の舞台は板橋の商店街。父親の代から続く中華そば店を営む康平。夫婦二人でやっていたこの店も、妻の突然の死から休業中。ある日、読書が趣味の康平、本を開くと、そこから妻宛ての一通の古いハガキを見つける。差出人は大学生の小坂真砂雄。30年前、当時、妻は見知らぬ人からハガキが届いたと言っていた。そんな見知らぬ人からのハガキを、何故妻は本に挟んでとっておいたのか?

 

  

 

康平はその謎を解くために旅に出るのだが、その謎解きの合間に康平が最近興味を持った各地の「灯台」が挟み込まれている。あまり注目されることもないといった印象の灯台ですが、本書を読んでいると、康平が見た灯台を見たくなってくる。堪らず途中で画像検索しちゃったりして(笑)

 

この灯台がラストへ行くほど妻の過去と結びついていき、感動的なシーンが待っているわけだが、そこへ行くまで謎の行方が知りたくて先を急いでしまう。

 

この康平の妻がね、本当に強い人というかね。とにかく良いんだわ。それだけではなく、康平の店の界隈に住む人々や、成長した娘や息子との交流がこれまた人情味があってなんとも温かい関係なんです。これだよねぇ、宮本作品の旨味は。旨味と言えば、康平の作る町中華の描写も美味しそうで、読んでいてお腹もすいてくる。

 

妻の過去を巡る旅は、彼女の人生を辿る旅でもあり、そして、その旅はやがて、夫だけでなく、なにか読者の我々にも背中を押してくれるような読後感があった。そして、背後には威風堂々とした灯台が見守ってくれている。