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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【感想・あらすじ・レビュー】墨のゆらめき:三浦しをん

 

 

墨のゆらめき:三浦しをん著のレビューです。

☞読書ポイント 

思い存分、登場人物のキャラクターを楽しめる一冊。ちょっと変わった謎の書家・遠田の魅力にどんどん惹きこまれながら、ホテルマンの続(つづき)との関係も楽しもう。

 

感想・あらすじ 

 

本作のあらすじを問われたらちょっと戸惑う。というのも、この物語は書家の遠田薫についてだけを綴られたものと言っても過言ではないほど、遠田についての物語なのである。

 

というかすごいですよね。実存した人物でも、偉業を成し得た人でもない人物を、ここまで読者を巻き込んでしまうしをんさんの力量。なんとなく漫画なら分かるのですが、文章でそれをまるまる一冊書き綴ってしまうということ、読み終え、内容を振り返った時に改めて「すごっ」って言葉をつぶやいてしまいました。

 

物語は登場人物をいかに魅力的に描けるかが大きいと思うのですが、本書の遠田は、まさに何とも言えない魅力がある。そして、彼にまつわる過去や生い立ちが謎であるところが読者を最後まで引き付けるわけだが、その匙加減が絶妙なんです。

 

そして、もう一人。遠田の魅力を引き出すのに程よいキャラである実直なホテルマンである続(つづき)。遠田のぶっ飛んだ雰囲気と、真面目な続のやり取りにどんどんハマっていくと同時に、読者も続と同様、遠田についてあれこれ知りたくなっていく。

 

 

 

 

と、話が前後してしまいましたが、ホテルの筆耕の仕事を依頼する立場の続が、遠田の自宅兼書道教室を訪ねるところから話が始まる。そこであれよあれよと、遠田がしている手紙の代筆を手伝わされる続。

 

その後も何度か遠田の家に行くことになる続。遠田に翻弄されつつも、遠田と過ごす空間にどんどん居心地の良さを覚える。遠田の過去が気になりながらも、関係の距離感を保つ続であったが、ある日、遠田が筆耕の仕事を打ち切るという。もう会えなくなるという焦りから遠田の家を訪れるとそこに.....。

 

遠田と続はもちろん、教室に通っている子供たち、そして飼い猫を含め、すべてのキャラが個性的で愛すべく人々。ここはしをんさんの腕の見せ所って感じで、非常に楽しいです。また、小難しいことはさておき、遠田の書く「書」の魅力も。

 

わたしも書道はずっとやって来たひとり。中国の「顔真卿」などの話がサクッと挟みこまれ、もっと読みたい!って気にもなったのですが、そこを広げると、このふたりの絶妙なテンポが乱れてしまうんだろうなぁと思ったりも。やはりこの物語は「書」がテーマと言うより、遠田と続の関係性の楽しさを存分に味わう話であるとしみじみ思う。

 

ドラマとかの映像化、きっとされるんじゃないかな。わたしは読みながら遠田はエレファントカシマシの宮本さん。続は田中圭さんあたりを想像してたのですがどうでしょう。(あ、宮本さんはドラマは出ないか(笑)。じゃー、小栗旬さんあたりかな)

 

余談ですがこういう男性2人組が活躍する話を「バディもの」というそうです。いろいろなカテゴリ―があるんですねぇ。

 

 

 

 

表紙について

オブジェ「胞」は造形作家shikafuco(シカフコ)氏が制作。なんと「土」が素材のようです。「墨のゆらめき」に合わせ、東京で個展も開催されたようですね。(すでに終了)

 

三浦しをんプロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○(まる)』でデビュー。2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞、2015年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞、2018年『ののはな通信』で島清恋愛文学賞、2019年に河合隼雄物語賞、2019年『愛なき世界』で日本植物学会賞特別賞を受賞。(新潮社・著者プロフィールより)

 

合わせておすすめ Audible版 – オリジナルレコーディング

本作はオーディブルから公開されたんですよ。遠田と続の会話がどんな風に表現されているのか気になります。 

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ラジオでも紹介されました。

matome.readingkbird.com