カム・ギャザー・ラウンド・ピープル:高山羽根子著のレビューです。
筋は掴みにくい。けれども、読み続けたいという気持ちが高まる不思議感
今回、芥川賞候補ということで、どんな作家さんなのか気になり借りて来ました。「候補作」と帯にありますが、これは前回の候補作だったのですね。160回から毎年候補になっているという高山さん。3度目の正直になるのでしょうか。
カム・ギャザー・ラウンド・ピープル━━タイトルとは不似合いな、昭和の場面が広がる内容の意外性にまずびっくり、というか、ホッとしながら読み進めることに。
とは言え、いざレビューを書こうとすると、驚くほど「筋」が見つからない。ただ、いくつかの印象的な話は確かに存在する。
例えば、主人公が少女だったころ、おばあちゃんの背中がとても美しかったという話が登場する。親には何故かそのことは言えずにいたけど、おばあちゃんの背中はきれい。そして、お経を唱える声がエロいと感じた。やがておばあちゃんは亡くなるのだが、最後にどうしてもそのきれいな背中を見たいと、大人がいない時に、棺の中のおばあさんをひっくり返そうとする。
・・・最初はほのぼのした話だと思っていたけれども、祖母との別れのシーンにきて、その過剰な願いが炸裂したかのごとく、少女の行動にドキドキさせられる。
そうかと思えば、下校時に知らないおじさんにお腹をなめられた.....なんていう、とんでもない話も。
話が進むごとに、主人公も成長し、大人になる。その過程のなかで、いくつかスポットが当てられるかのように、これらの話が現れる。
後半に登場する渋谷の描写はとてもリアルでした。まるで地図の上を辿っているかのように、私も主人公と一緒に渋谷の町を駆け抜けた感が。
ふわふわっとした感じや、このようにとてもリアルなシーンもあり、そのギャップもなんだか面白い。
ということで、好き嫌い分かれそうな作品かな~って思います。芥川賞候補作って、本当に個性が強いと感じます。よって、自分の中で候補作は好き嫌いがきっぱり分かれますが、高山さんの作品は好きかな。筋を掴むのは難しかったけれども、何と言っても読み易い。なので、もう何冊かは読んでみたいなぁーと思いました。
今年候補になっている「首里の馬」は、また違った魅力がありそうです。きっと受賞されたいだろうなぁ。3度目の正直になるか?密かに応援しています。
(こちらの書評は1週間前に書いたものになり、芥川賞発表前でした)
<2020.7.15 追記>
芥川賞受賞、おめでとうございます。受賞作品はこちら!!