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【レビュー】浪漫的恋愛 :小池真理子

 

 浪漫的恋愛 :小池真理子著のレビューです。

浪漫的恋愛 (新潮文庫)

浪漫的恋愛 (新潮文庫)

 

 

恋によって狂った人々の姿が強烈に私たちの心に刻まれていく

 

小池さんの濃厚な恋愛小説、久しぶりに読みましたが、やぁ、、しばらく恋愛小説は不要かも?と思うほど、とにかくたっぷり、ずっぽり、二人だけの世界に溺れさせていただきました(笑)

 

約500頁。どのページからも滴り落ちる濃密な男女の時間が描かれているわけだが、小池さんの力を持って、やはりめくるめく世界に誘われちゃったな。不倫という設定なので、多くの人は嫌悪感を抱く内容ですが、一組の男女の話だけではなく、3組の男女の話が並行して描かれているので、なんとなくどの話も気になってどんどん読まされてしまう。

 

1つ目は46歳・編集者の千津。そして、千津が編集を手掛けているアンソロジーの作品のひとつ「月狂い」の作家の遺族である倉田。アンソロジーという事で、その作品収録の許可を得るために、千津は倉田のもとを訪れ、そこで恋に堕ちる。

 

2つ目は、その「月狂い」という作中の話のなかに登場する男女の不倫。

3つ目は、千津の母親とかかりつけの医師との不倫。

 

千津と倉田の話を軸に、それぞれの話が進んでいく。

 

一段階段を踏み外したところから、一気に恋という奈落の底に堕ちていったような男女。先には生死の選択しか残っていないような息詰まる想い。その中にある甘美な世界。日常生活はすでに破綻し、他は一切見えなくなり、自分と相手だけしかいないという閉ざされた世界。恋によって狂った人々の姿が強烈に私たちの心に刻まれていく。そして、これらの話に登場する「月」が持つ力とは?

 

千津は自分の育った家庭環境、特に母親の二の舞を踏まないようにと用心しながらも、自分がどこか母親に近づいて行っているように思えて来る。そして、ある決断をするのだが・・・・。

 

  

横浜や鎌倉を舞台に、恋の初期の華やいだ気持ちから、絶望に近い不安定な気持ちの末期まで、それはそれは細かく丁寧に描かれている。千津の心臓の鼓動が読者にまで移るようなちょっとした一体感までもが生まれる作品であった。

 

よくこういう作品を「大人の恋愛」と一括りにする傾向があるけれども、「大人の恋愛」ってなんだろう。私は本書を読んで、むしろ幾つになっても大人の恋愛なんて存在しないんじゃないかと思ったのです。

 

恋をしたときのときめきや時間の流れ、何度も携帯を確認しちゃうような行動。すべてがいつかした恋愛の時期に「戻る」という感覚に近い。

 

でも、ひとつ言えるのは、大人になってからの恋愛は、千津のように自分を俯瞰して見られるようになる。そこが大人の恋愛なのかも知れませんね。

 

ということで、ボリューム満点の恋愛小説。やっぱり、小池さん、このジャンル強いなぁ。長編はどっぷり浸れるので良いです。こってり系の恋愛小説を読みたい方にお勧めです。