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【感想・あらすじ・レビュー】ハンチバック:市川沙央

 

 

ハンチバック:市川沙央著のレビューです。

☞読書ポイント 

2023年芥川賞受賞作。とにかく圧倒される強い作品。文体は軽やかだけど、内容はハード。いきなりパンチをくらうような感覚。覚悟して読むべし。

 

 

 

 

 

感想・あらすじ (ネタバレなし)

とにかくいつも以上に話題になった芥川賞の一冊。受賞前からじわじわとメディアで目にしていたので、比較的早めに図書館に予約を入れていたのですが、それでも読めたのは受賞後。...という、あまり内容とかも考慮せず、とにかく読もうと借りて来た。

 

読むころにはすでに作者の市川さんがどのような方なのか、会見等で拝見し、そのパンチの効いた発言に「おぉ!」となったのですが、市川さんの作品はそれ以上にパンチの効いた一冊だった。なんだかずっと叱られているというか、なじられている気分での読書。ある意味こんな気分にさせられる読書は滅多にない。どなたかの選評で「ユーモラス」という言葉を見かけたが、わたしにはとてもとてもその粋の感想は持てなかったです。

 

まずは主人公が全身の筋緊張低下をもたらす病気・筋疾患先天性ミオパチーであること。なじみのない病気ですが、背骨が右肺を押しつぶすかたちで湾曲しているということから日常生活が困難な状態。市川さんはこの主人公と同じ病気であり、読んでいるとどうしても実話のように思え、彼女を思い浮かべながら読んでしまう。また、人工呼吸器も使ってるため、痰の吸引などかなりリアルな描写が続きます。

 

両親の遺産で自身の持つグループホームで生活し、WEBライターとしての収入もあり、かなり裕福である。

 

そんな彼女が健常者へ、つまり健常者である読者に牙を剥く。そのあたりの内容に差し掛かると、思わずページをめくる指が重くなるような....。確かに紙の本を読むという、健常者にとってはあまりに簡単にできることだけど、そうはいかない人の立場から見ると、このくらいの気持ちになっても当然と言えば当然なのかもなぁと思う。それをダイレクトに突きつけられると、もうどうしていいのやら....と、戸惑い、ぐうの音も出ないといった居心地の悪さがあった。

 

そして、障がい者の性描写や、主人公が持つ夢である「妊娠して中絶したい」など衝撃的な話も登場し右往左往。自分でもどこにこれほどまでに動揺させられているのか意味不明ではあったのですが、とにかく最後まで読み続けるしかない。

 

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芥川賞を受賞された市川さんの言葉。「怒りだけ」という部分がこだまする。確かにこの作品には、なんのオブラートもなく、まさに目の前に鋭いナイフを突きつけられているような感覚があった。「あんたら、目を見開いてよーく見てみ」って、ずっと言われているような...。

 

本作についてのいくつかの感想を読んでみましたが、そこには「大変だ」「気の毒」というありがちな言葉がほとんどなかった。あっても良さそうなもののない。それがこの作品の威力なのだと感じる。

 

同病の方や障がいを持った方が本作を読んだらどう感じるのか?そこをちょっと知りたいと思った。

 

ということで、気楽に読み始めたことを後悔するほど「強い」作品であった。怒りのエネルギーの強さに圧倒され、ドンっと背中を押され、本の世界から追い出された気分で読了。

 

 

 

 

ハンチバックとは?意味は?

タイトルの「ハンチバック」とは背中が曲がった「せむし」のこと。

 

市川沙央プロフィール

1979年生まれ。早稲田大学人間科学部eスクール人間環境科学科卒業。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。「ハンチバック」で第128回文學界新人賞を受賞し、デビュー。(Amazonより)

試し読み

『ハンチバック』市川沙央 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS

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