かあちゃん取扱説明書:いとうみく著のレビューです。
この本について
第60回青少年読書感想文全国コンクール(2014年)の課題図書になった本です。ページ数は152頁。小学生中学年向け。出版社は童心社、2013年に刊行。
☞読書ポイント
感想: やっぱりかあちゃんはスゴイのだ!
おかあさんの取扱説明書があったら怒られる回数も減り、快適な毎日がおくれるだろう....と思うこどもは多いはず。そんなこどもの声が聞こえて来そうなタイトルに、思わず微笑んでしまった本書。
かあちゃんの扱い方や、こんな時はこうする的な手引きっぽい内容だと思っていましたが、意外にもしっかりしたストーリーがあり、なんだか泣き笑いしたくなるような、それでいて母親の偉大さみたいなものがひしひしと伝わって来る話でした。
前半はガミガミ怒るかあちゃんに対してのこどもの愚痴が。「おいしい」と言ったら何日も同じごはんが出てきたり、ぼくが食べたいと言った時にもったいぶってくれなかったロールケーキ。結局カビちゃった。ケチなんだから!....と、こどものかあちゃん観察はクスクス笑えるものが多い。
そんなぼくに、とうちゃんがかあちゃんの扱い方をこっそり教えてくれる。褒めると機嫌がいいとかね。要は扱い方なんだと。それをヒントに、ぼくは「かあちゃんの取扱説明書」を密かに作り始める。
かあちゃんとのやり取りの中で、ぼくは色々な発見をする。成功させるためにはかあちゃんのことを観察し、たくさん知らなければならい。次第にぼくはかあちゃんが働いているスーパーまで行き、こっそり職場でのかあちゃんの姿を見るのだが....。
ページが進むごとにかあちゃんが怒ることも減って行き、やはり取り扱説明書が効いて来たんだなぁ....と思わないわけでもないけど、本当のところはどうなのだろうか?
もともとかあちゃんを攻略する感じではじまったものが、読んで行くうちに「かあちゃんのことが大好き」という空気感が漂ってくる。そうだよねぇ、こんなにもじっくりひとりの人と向き合えるのも、根底に「好き」がなきゃ難しいもの。
脇役のとうちゃんもいい味出しています。それと、友達のカズは親子関係がちょっと心配なムードを持ったこども。最後まで彼の様子も気になるところです。
さて、結末は?
かあちゃんには敵わない。
ぼくといっしょに、わたしも思わずうなってしまいました(笑)
いとうみくプロフィール
神奈川県生まれ。フリーライター。広告から教育・保育・福祉・食関係の企画制作まで幅広く行う。『気のいい死神』で第37回JOMO童話賞優秀賞受賞。『糸子の体重計』(童心社)で第46回日本児童文学者協会新人賞受賞。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」(Amazonより)