女中譚:中島京子著のレビューです。
昭和の女中が秋葉原のメイドカフェに現る!
・林 芙美子「女中の手紙」
・吉屋信子の「たまの話」
・永井荷風の「女中のはなし」
以上3つの短編をモチーフに中島さんが物語にしたもの。
この3編を読んでいなくても、十分愉しめる内容になっていますが、
事前に読んでいる方は、面白みも倍増するのでなはいかと思います。
内容は昭和初期に女給・女中をしていた一人の老婆スミ
(90歳すぎ)の思い出話。
設定はこれまたおもしろく、スミは秋葉原のメイドカフェの常連。
スミの話の聞き手はそこに集まる若者であったり、
同じアパートに住むメイドカフェのメイドの「りほっち」だったりする。
失業をし、どうしょうもない男とカフェーのメイドの腹黒さを扱った話。
麹町の洋館で独逸帰りのお嬢様につかえる従順すぎる女中の話。
麻布の変人文士先生をお世話しながらダンスの稽古にいそしむ女中の話。
特に林芙美子ベースの「ヒモの手紙」が面白かった。
人間の嫌な部分がチラチラ見えて、あーなんか林芙美子っぽい!
と感ずる内容でありました。
「リプトンの青缶」「ベルベットのカーテン」なんて言葉がさりげなく
話に盛り込まれいるんですが、テレビとか映画でいう小道具の使い方が、
中島さんならではといった感じで、細かい部分まで行き届いてる描写には
本当にワクワクしました。
最後は秋葉原のあの殺人事件らしきシーンが登場。
すごいフェードアウトです。
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