日のあたる白い壁:江國香織著のレビューです。
「江國美術館」へ
美術館にいくのが好きです。(中略)いろんな国のいろんな街で、美術館へいきました。そこで出会った絵について書くことは、でも勿論私について書くことでした。(まえがきより)
本書は江國さんが「出会った」絵について紹介されているもので、古今東西27人の画家の作品が選ばれ掲載されています。
原田マハさんのアート小説を読んだおかげで、こういった絵画を扱った本にも興味がもてるようになったわけですが、やはり本書もあっと言う間に引き込まれてしまいました。
本を読んだ感想はこうして毎度書いているので、自分の中では表現しやすいのですが、じゃー絵の感想は?となると途端に口が重くなる。
「色が良い」とか、「この風景が好き」とか、「雰囲気が好み」とか…簡単な感想しか言えないのも、おそらくそれほど知識もないし、ミーハー感覚での鑑賞経験しかないからだと思っていた。
本書を読むとさすがに物書きが言う感想は違うなぁーと感じる。
圧倒的なしっくりと来る言葉を用い、いとも簡単に表現されている。
なるほど…こういう風な視点で絵を観て、こういう風な言葉を使って表現するのかと。でも、よくよく読んでいくと、根底に感じるものはとてもシンプルで、きっと万人がもつ感想とそう変わりがないこと気づく。
例えば「懐かしい絵」とか「孤独を感じさせる絵」など江國さんもまずそんな感想を持たれている。そこからどうエッセイに発展させていき、読者を夢中にさせ、その画家に興味を持たせてしまうのかは、やはり長年絵画に触れていた人にしかない知識であったり、磨かれた「目」であったりするんですね。そこに強力な文章力が加わる…という形で、ひとつの感想にまとまって行く。
そしてなによりも「自由」な感じが心地良い。めくるめく言葉の数々と美しい絵に心を奪われながら、「はぁ~」と、うっとりしたため息をつかせるのです。
今回掲載されている絵画は、どれも本当に素敵なものばかり。
ホッパーの「海辺の部屋」、ゴッホの「夜のカフェテラス」、バルテュスの「窓辺の少女」私自身もとても気に入りました。
何度でも観たい絵…が私の中でまた増え、そして、この本はやはり借りる本じゃなく手許に置いておきたい離れがたい本。
「宝物のような一冊」と装丁後ろ書きにもありましたが、まさにまさに!
ちゃんと買って枕元に置いておこうと思います。江國さん解説(ガイド)の美術館があればいいのになぁ…。